陸軍九四式軍刀鐔・大切羽揃(初期型) 組立番号「&769」 -Assembly Number &769- 12-1832
通常価格:¥88,000
税込
陸軍九四式軍刀鐔・大切羽揃(初期型)
組立番号「&769」
-Assembly Number &769-
縦70.1ミリ 横59.1ミリ 切羽台厚4.9ミリ
重さ127.6グラム
昭和前期 The early Showa period
附属 大切羽二枚
九四式軍刀は昭和九年に陸軍将校用として制式化された新軍刀で、伝統的な太刀拵の姿を近代軍装へ採り入れ、通常は二個の佩鐶を備える端正な外装として知られています。本品はその鐔と大切羽二枚が一組で伝わったもので、四隅へ桜花を配し、外周を優雅な曲線でつないだ造形には、軍用品としての規格性を保ちながら日本刀装の格式と象徴性を表そうとした当時の意匠感覚がよく現れています。
注目すべきは中心孔脇に設けられた駐爪穴の位置で、この配置から九四式軍刀金具の中でも初期型に属することが分かります。鞘から刀身が不用意に抜けるのを防ぐ駐爪の通路は外装の構造と密接に関わるため、その穴の位置は単なる形の違いではなく、制式軍刀が製造時期によって改良されていった過程を読み取る重要な手掛かりであり、外観だけでは見落としやすい細部に初期型ならではの特徴を明確に残している点は、資料性の面でも見逃せません。
鐔と大切羽には黄金色の鍍金が比較的よく残り、鐔の外周には唐草を思わせる流麗な曲線と肉厚な桜花を立体的に表し、大切羽も鐔の輪郭へ沿うよう丁寧に整えられています。中央部には実際の装着による擦れや時代を経た色調が見られるものの、外周や文様部に残る鍍金が桜花と曲線の起伏を明るく引き立て、初期型九四式軍刀金具が本来備えていた華やかな姿を今日までよく伝えているため、軍装具としての履歴と観賞性の双方を味わえます。
鐔と二枚の大切羽には、数字の前に「&」を添えた共通の組立番号「&769」が打たれています。軍刀外装では、鐔、切羽、縁、柄、鞘口金具など、個々の刀身に合わせて調整した部品を製作工程中に取り違えないよう共通番号を付す例が知られ、「&」を数字の接頭記号として用いた同様の作例も確認されています。この「&」は特定の軍刀メーカーを示す商標や工廠検査印ではなく、番号と一体になった工房内の照合記号とみるのが妥当で、三点すべてに同じ「&769」が残ることは、鐔と大切羽が当初から同じ一振のために調整された揃いであることを物語ります。軍刀装具は長い年月のうちに分散しやすく、鐔だけ、あるいは切羽の一部だけで残る例も多いなか、駐爪穴を備えた初期型の鐔と大切羽二枚を一括して比較できる本品は、欠品した九四式軍刀拵の補完用としてはもちろん、初期型金具の意匠、寸法、取付構造と製造現場の管理方法まで観察できる実物資料としても価値があり、昭和軍装史を立体的に伝える内容の整った一組です。