雲龍図鐔 吉山幸良 -Yoshiyama Yukiyoshi- 12-1818
通常価格:¥880,000
税込
雲龍図鐔
吉山幸良
-Yoshiyama Yukiyoshi-
縦73.7ミリ 横71.65ミリ 切羽台厚4.6ミリ
重さ113.5グラム
江戸後期 The latter period of Edo era
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
吉山幸良は詳しい伝歴こそ多くを伝えないものの、本作は堅丸形の厚みある鉄地を舞台に、色金の華やかさへ頼ることなく、鋤出彫を主体とした肉取りと鏨の働きだけで雲中の龍を雄渾に描き上げた力作であり、作者の造形力と鉄を扱う確かな技量が正面から伝わる作品です。
龍は水を司る霊獣であると同時に、天へ昇って雲雨を呼ぶ姿から、権威、守護、飛躍、運気上昇を象徴する吉祥画題として武家に好まれてきました。本品では表の上方へ大きな龍頭を置き、雲を押し分けるように前脚と鋭い爪を現しながら、長い胴を画面下方へ巡らせています。鐔の円周そのものを雲海に見立てたような大胆な構成により、龍が静止しているのではなく、厚い雲の中から眼前へ迫り出す瞬間が捉えられ、正面から眺めた際には重厚な威容、角度を変えた際には肉取りの起伏と躍動感が鮮明に立ち上がります。
大きく見開いた眼、隆起する眉、後方へ伸びる角、風をはらんでうねる鬚、口元に重なる牙や顎鬚まで細部を彫り分け、深く取った眼窩と力強く張った鼻梁によって霊獣らしい鋭い表情を形成。節のある脚から伸びる爪は雲をつかむように鋭く、鱗は一枚ずつ整然と刻みながら、部分ごとに彫りの深浅を変えることで胴の丸みと遠近を表しています。これに対して周囲の雲は、輪郭をなだらかに起こして柔らかな量感を与えており、硬質な角や爪、細密な鱗との対照が、鉄一色の画面へ豊かな強弱と奥行きを生み出しています。
裏面にも雲気の流れと龍体が途切れることなく続き、表で姿を現した龍が雲間を大きく旋回する様子を、鐔を返しながら追うことのできる構成です。文様を片面だけの見せ場に終わらせず、表裏を一つの画面としてまとめた点にも作者の構想力が表れ、雲の高低や地鉄の細かな肌合いは光の方向によって静かに表情を変えるため、遠目には雄大な全景、手元では鏨跡と鉄味をじっくり味わえます。
縦73.7ミリ、厚さ4.6ミリ、重さ113.5グラムという充実した寸法と手取りを備え、地鉄の落ち着いた古色も雲龍の荘厳な趣によく調和しています。保存刀装具鑑定書を伴う安心感に加え、彫技、鉄味、構成、保存状態を総合すれば、特別保存刀装具の審査にも十分な期待を寄せられる格と見応えを備えた作品と評価できるでしょう。重厚な拵の中心としてはもちろん、独立した金工作品として飾っても強い存在感を放ち、龍図を好む方、鉄地高彫の迫力を重視する方にとって、長く手元で楽しみたい魅力ある一枚です。