政信 -Masanobu- 14-291
通常価格:¥2,200,000
税込
政信
-Masanobu-
縁 縦38.2ミリ 横12.85ミリ
頭 縦34.25ミリ 横42.5ミリ
重さ42.5グラム
江戸後期 The latter period of Edo era
附属 特別保存刀装具鑑定書、桐箱
政信は江戸を代表する町彫金工の一派である浜野派の四代を継いだ金工で、安永二年(1773)生まれ。浜野鋪随の門人となり、のち養子となって浜野本家四代を継承した人物で、乙柳軒の号でも知られています。初代政随に始まる浜野派の伝統を受け継ぎながら、江戸後期らしい精緻で写実味に富んだ彫技を展開しました。
その力量を示す代表的な遺品の一つが、メトロポリタン美術館に収蔵される「虫尽金具大小拵」です。秋草と虫を題材とした一揃いの金具を政信が手掛けたもので、同館でも乙柳軒政信を浜野派四代と明記しています。
また、政信による「煮干図三所物」は朧銀を巧みに用いて煮干の質感を写実的に表現した作品として紹介されており、単なる装飾性にとどまらず、素材の色調と彫技によって対象そのものの質感を描き出す政信の力量を窺わせます。
本作は、その政信が獅子を題材として仕立てた華麗な縁頭です。黒々とした赤銅地を背景として、頭には獅子を画面いっぱいに据え、厚く盛り上がった立体的な造形によって圧倒的な存在感を生み出しています。獅子の身体から鬣、尾毛へと連なる曲線は実に躍動的で、幾重にも渦を巻く毛筋を一本一本彫り分けながら、顔貌、四肢、爪に至るまで緻密に作り込まれています。頭の獅子は金を用いた据紋とみられ、その身体に散らされた大小の黒い斑は赤銅象嵌と思われます。黄金色の獅子と深い黒色を呈する赤銅地との鮮烈な対照に、赤銅の斑がさらに変化を加え、豪華さの中にも引き締まった趣を備えています。
縁には伏す獅子を横長の空間いっぱいに配し、頭とは趣を変えて、四分一と思われる落ち着いた色調の獅子を高肉に表しています。身体に散らされた金の斑、爪や細部に施された金色が黒い赤銅地の上に浮かび上がり、頭の黄金色を主体とした獅子と見事な対照をなしています。とりわけ注目したいのは、頭と縁を単純に同じ仕上げで揃えるのではなく、同じ獅子という題材を異なる色金の対比によって一具としてまとめ上げている点でしょう。頭では華やかさと威厳を、縁では渋みを帯びた力強さを見せながら、豊かな鬣と尾毛の表現によって両者を結び付けています。
獅子は古来、威厳と勇猛を象徴する意匠として武家の調度にも好まれた題材ですが、本作ではその力強さに浜野派ならではの華麗な色金使いと精緻な彫技が加わり、小さな刀装具の中に彫刻作品さながらの迫力を生み出しています。
浜野本家四代という確かな系譜、海外の著名美術館にも作品が収蔵される政信の作家性、そして据紋・象嵌・高肉彫と色金を駆使した豪華な出来を併せ持つ、鑑賞性と資料性の双方に優れた縁頭です。