吉中 -Yoshinaka- 3-930
通常価格:¥880,000
税込
刃長38.85センチ 反り0.6センチ
元幅31.6ミリ 元重ね9.6ミリ
物打幅26.5ミリ 物打重ね7.3ミリ
裸身重量502グラム 拵に納めて鞘を払った重量824グラム
刀身を拵に納めた総重量 1,285グラム
江戸中期~後期 The middle ~ latter period of Edo era
平成6年3月15日 東京都登録
附属 銀造黒蝋塗鞘脇指拵、白鞘、継木、下貝素銅地赤銅着上貝素銅地金着はばき
吉中について銘鑑を繙いてみましたが、その名は確認できず、銘鑑漏れの地方刀工であった可能性が高いと考えられます。無名に近い存在ながら、その作柄からは確かな力量が感じられます。
本刀は元先の幅差が大きく開いた平造りで、重ねが厚く、全体に豪壮な造り込みです。地鉄は杢目がチリチリと肌立ち、野趣を帯びた力強い表情を見せています。刃文は匂口沈みごころの直刃を焼き上げ、所々に食い違い風の刃を交え、変化を添えています。鋩子は直ぐに先丸く返る穏やかなまとめ方です。
現状は古研ぎのため匂口が沈んで見えますが、研磨により本来の刃中の表情がより明瞭になることが期待されます。
附属の拵は、まさに贅を尽くした総銀造りです。柄には鮫皮を用いず、銀の地板に鉄にて細やかな鏨使いの唐草文様を彫り出しており、類例の少ない特異な意匠です。柄に据えられた日輪の出目釘はひときわ威光を放ち、金と銀が織り成す色調の妙は、言葉を失うほどの味わいを見せています。
鐔鳴りはごくわずかに認められる程度で、柄にがたつきはなく、実用・鑑賞のいずれにおいても安心できる状態です。
拵全体の重さは継木を含まず770.5グラムを量り、総銀造りならではの量感と存在感を存分に味わえます。使用されている銀の目方はおよそ450グラムと推測され、地金代だけでも18万円以上に相当します(2025年12月25日現在)。工芸的価値を差し引いても、この数値は本拵の格の高さを如実に物語っています。
刀身と拵が相俟って強い存在感を放つ一方で、拵のみでも独り歩きできる完成度を備えた名品です。確かな目を持つ蒐集家にこそ手にしていただきたい、特筆すべき一振です。