無銘(古吉井)- Mumei (Ko Yoshi) - 2-1844
通常価格:¥2,530,000
税込
刃長72.18センチ 反り2.3センチ
元幅29.4ミリ 元重ね7.05ミリ
物打幅21.3ミリ 物打重ね5.3ミリ
横手位置幅18.7ミリ 松葉先重ね4.2ミリ
裸身重量642グラム。 拵に納めて鞘を払った重量1,004グラム。
鎌倉後期 The latter period of kamakura era
平成22年9月15日 神奈川県登録
附属 特別保存刀剣鑑定書、銀無垢二重はばき、陸軍九八式軍刀拵、白鞘、継木
吉井派は鎌倉時代後期以降、備前の吉井川を挟んで長船村の対岸の地で作刀した為則を祖とする刀工一派です。鎌倉時代後期から南北朝期までの物を古吉井、室町期以降の作を吉井と呼称します。同派は次の室町期にも栄え、他の備前諸派が長船派にほぼ統合されてからも、小互の目乱れを連れた刃文を焼く作風を墨守しました。
この刀は大きく磨り上げられるも今尚つ力踏ん張りがつき、小板目杢交じりの地鉄は流れ、地景入り、少しく肌立って淡く映り立ち、刃文は小沸本位の互ノ目乱れで、所々に蛙子丁字風の刃を交え、刃中の随所に砂流や金筋が看取出来、鋩子は直ぐに焼きたっぷりと丸く返るなど、古名作には必ずと言って良い程見受けられる繕いが無く、総じて健全であり、然るべき研磨を施せば近い将来重要刀剣指定を受けるものと思われます。
附属する陸軍刀拵は、第二佩鐶を逸失した元九四式拵で、目貫には端正な桔梗紋があしらわれています。拵の表裏で色調が異なる点も特筆すべき特徴で、これは戦後GHQによる刀狩りの折、「家伝の刀を決して渡すまい」との一念から、旧所有者が囲炉裏の上に長年秘匿していたことに起因します。その痕跡は、単なる経年変化ではなく、激動の時代を生き抜いた証として、深い説得力をもって語りかけてきます。 刀身そのものが鎌倉後期の名作として長き歴史を有することは言うまでもなく、加えてGHQの刀狩りという近代史の転換点において、持ち主が身を挺して守り抜いたという実話が、この一振に比類なき歴史浪漫を与えています。日本刀が辿ってきた数百年の歩みと、人の想いが重なり合う逸品を、ぜひこの機会にお手元でご堪能ください。