信國 文明十三年十二月日- Nobukuni- 6-089
通常価格:¥660,000
税込
刃長32.3センチ 茎の長さ40.3センチ
元幅19.3ミリ 元重ね9.3ミリ
物打幅25.1ミリ 物打重ね7.0ミリ
螻蛄首五角形 螻蛄首下部幅17.3ミリ 螻蛄首下部重ね11.3ミリ
裸身重量500グラム
室町中期文明13年(1481) The middle period of Muromachi era
昭和35年12月20日 東京都登録
附属 特別貴重刀剣認定書、白鞘
古来、初代信國は相州貞宗の門人といい、時代を建武と伝えていますが、現存するものに建武およびその近辺の年紀は皆無で、またそこまで遡ると鑑せられる作も見当たらず、しかも現存する最古の延文・貞治年紀の信國の作風が、貞宗と直結することから、今日では延文・貞治を初代と見做すのが通説となっています。
彼は伝書に拠れば了久信(了戒の子)の子、或は孫と記されていますが、延文三年及び康安元年紀の作に来派の伝統である直刃が見られることや、鍛えが直刃・乱れ刃に拘らず流れるところなどに所伝を首肯せしめるものがあります。 南北朝末期には代替わりの信國が存在し、更に応永頃に入ってからの信國派には、式部丞信國・左衛門尉信國の両工が代表工として著名で、他に二字銘の信國を銘する刀工がおり、いずれも應永年紀を切るところから「應永信國」と呼称されています。 同銘が何人いるか明らかではありませんが、流石に京鍛冶の名門であるだけに、信國を名乗る刀工の作には優れたものが経眼されます。
初代信國の作風は京物の伝統を示した直刃と貞宗風を承けた湾れ刃の二様が主でしたが、南北朝末期の代替わりの信國から「應永信國」にかけては、上記の作風の他に互の目調の乱れ刃の作域が新たに加わります。
本作は、刃長一尺を超える大身槍の中でも、文明十三年の年紀を刻む極めて希少な一筋であり、五角形で長く伸びる螻蛄首、元先の幅差が大きく開いて先に行くほど幅広となる堂々たる姿、尋常なフクラの張り具合など、その造り込みはまさに室町中期の力強さを象徴するものです。
螻蛄首には三鈷剣の彫刻が施され、平地には幅広の樋を角止めとし、その内部には龍が巧みな技術で彫り込まれ、武器でありながら高度な美術性を併せ持つ、まさに名工の息吹を伝える逸品と言えます。
地鉄は板目肌よく練れて地景入って柾に流れ、刃文は匂口明るく冴え、直刃基調に浅く湾れて互ノ目を交え、刃縁には随所に砂流が現れ、刃中には肌に沿うように千変万化の働きが浮かび上がり、古槍特有の奥深い気品を漂わせています。鋩子は直ぐに、ここにも盛んな砂流を伴いつつ丸く返るなど、細部に至るまで丁寧な仕事ぶりが窺えます。
さらに本槍は数多の戦場を実際に駆け抜けてきたとみえ、研ぎ減りによって低くなったケラ首周りの区の段差、磨耗して顔や鱗が消えつつある龍彫、そして刃毀れとして残る誉傷が、武器としてのリアルな歴史を今に語りかけます。
現在は古研ぎながら、上手な研磨を施すことで地刃の冴えは一段と引き立ち、文明年間の大身槍としての真価がいよいよ顕現することでしょう。実戦史料としても鑑賞用の刀剣としても申し分のない、歴史と美を併せ持つ名槍です。