濱部眠龍子壽實 文政八年八月日 - Hamabe Minryushi Toshizane - 2-1814
通常価格:¥1,485,000
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眠龍子壽實は、安永六年、因幡藩お抱え工である幕末の名人“浜部壽格”の子として因州鳥取東部に生まれました。名は浜部儀八郎。初銘は「壽国」、寛政八年二十歳の時江戸に上り、寛政九年(1797年)に壽實(寿実)と改名。4年後の享和元年(1801年)八月より眠龍子と号します。
父親譲りの旺盛な探究心と、優れた技術をもって焼く彼の華やかな丁子刃紋は多くの門人を集めるに至り、江戸の水心子正秀一門と並び、大いに名声を高め栄えました。
その門人の中に清麿の師として名高い河村壽隆が居り、眠龍子壽實の技は河村壽隆を通して源清麿に伝えられます。
本作は、兵庫県下の旧家から出たうぶ品で、体配は元先の幅差が頃好く開き、中切先やや延び。反りも程好くついて、すらりとした美しい姿を誇ります。地鉄は小板目がよく錬れて詰み、流れごころを交えつつ所々肌立って精美。刃文は匂口明るく冴え、締まりごころのある長い直焼き出しから始まり、全体に華麗な丁字乱れを破綻なく焼き上げています。刃中には足がよく入り、表裏ともに細やかで連続する丁子刃が見事に揃い、鋩子は乱れ込み小丸に上品に返り、松葉先が誇らし気に張るなど、壽實の高い作域を遺憾なく示しています。
茎には丁寧な化粧鑢が施され、銘も堂々と刻まれており、一振に込められた壽實の情熱と誇りが伝わります。健体で地刃ともに冴え、同工の典型作風を体現した優品であり、鑑賞刀としてはもちろん、コレクションの中核を担うに相応しい逸品です。
二尺強の刃長を有する刀には、古来より名品が多く見受けられます。これは、上士階級があえて短寸の刀を帯びることを好んだ風習に由来するものです。さらに本刀には、はばきが附属しておらず、これもまた大名家や上士が所蔵した名刀にしばしば見られる特徴であり、由緒と格を感じさせる要素といえます。