無銘(延寿) - Mumei(Enju) - 2-1808
通常価格:¥770,000
税込
肥後国延寿派は、来国行の孫と伝える延寿太郎国村を祖とし、鎌倉時代後期から南北朝期にかけて同国菊池郡の地で大いに繁栄しました。 この派の刀工には国資・国時・国泰・国吉等多くの名工がおり、これらの刀工達を延寿派と総称し、同派の年紀は菊池氏(南朝方)の抱え鍛冶という伝来を裏付けるように、全て南朝年紀で切られており、延寿という名から、「寿(とし)を延らえる(延ばす)」という縁起物としても尊ばれ、関の寿命と同様に武家同士の贈答に用いられました。
この刀は大磨上で、元の長さはゆうに二尺七寸程はあったであろう。元先の幅差は頃好く開き、中切先気持ち延びごころ。地鉄は小板目で地沸が付いて細かな地景が入り、淡く映りごころがあり、刃文はふわりとした柔らかい感じの中に、匂口締まりごころを交え、小足入り、やや幅広の足入り、って小乱れを成し、鋩子は直ぐに先大きく丸く返っています。
地鉄の粗い箇所が見られるも、700年もの長き時間を超えて今に勇姿を留めており、焼刃の駆け出しも無く、しっかりと鋩子の焼刃も残っている点は、まさに奇跡と言えましょう。
附属の拵は柄にがたつきもなく、手に吸いつくようにしっかりとしている。鐔鳴りも僅かで、実用に際して気になるものではない。黒の皺革塗りに雪華紋の一種と思われる文様が散らされ、その意匠からは相当な上士の佩刀であったことが窺える。
但し、誠に惜しむらくは、未鑑定時に本刀の真価を知らぬ者が、拙い腕で居合稽古に用いた形跡があり、折角の豪華な拵の鯉口が削れて開いてしまっていることです。
時代物の拵は本来、歴史的価値を有する文化遺産であり、決して稽古用に転用すべきものではないことを、ここに改めて強く申し添えたい。
尚、本拵は修復可能であり、柄糸の巻き直しも含め、その修復費用を考慮し、今回は特別に抑えた価格にてご案内致します。