樋定規に五三桐紋馬針 無銘 -Mumei- 16-264
通常価格:¥165,000
税込
樋定規に五三桐紋馬針
無銘
-Mumei-
全長12.88センチ 幅9.5ミリ 重さ15.1グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
馬針は馬の手入れや治療に用いたとされる実用具であり、刀装具の小道具として伝わる品には、機能性の中へ武家の意匠を凝縮した独特の魅力があります。樋定規は細長い溝を彫りつけた定規を指し、刀装具にも意匠として採り上げられた画題で、本作では五三桐紋と組み合わせることで、道具の端正な直線と桐紋の格式を1つの画面へ収めています。
鉄地の柄部には樋定規を横一文字に長く配し、その中央へ五三桐紋を置き、樋定規と桐紋の双方に金布目象嵌を施しています。細長い直線を基調とする構成の中で、桐の花と葉だけが柔らかな曲線を見せるため、馬針の引き締まった姿に華やかさが加わり、黒褐色の鉄地と金の明快な対照が端正な印象を作り上げています。
地には長い使用と保存を経た褐色の古色や細かな肌が残り、金布目象嵌は鉄地へよく馴染んだ落ち着きある輝きを示します。裏側では形状や地鉄の様子を明瞭に確認でき、薄く端正な造り、先端へ向かって絞られる輪郭、柄側の処理まで、通常の笄とは異なる馬針ならではの構造を楽しめます。
馬具文化と刀装具の接点を示す品は資料的にも興味深く、樋定規の簡潔な造形、五三桐紋の格式、金布目象嵌の輝きと道具の機能美を併せ持つ本品には、一般的な植物図や人物図とは異なる収集上の個性があります。実用品として研ぎ澄まされた細身の姿と、抑制の利いた金工意匠を同時に味わえる、歴史資料としても金工作品としても見応えのある一作です。