福寿草図笄 無銘 -Mumei- 16-263
通常価格:¥275,000
税込
福寿草図笄
無銘
-Mumei-
全長20.7センチ 幅12.1ミリ 重さ33グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 桐箱
福寿草は雪解けを待つように早春の地上へ姿を現し、黄金色の花を開くことから、新春を告げる吉祥花として古くより親しまれてきました。その名に「福」と「寿」を備え、幸福、長寿、希望を象徴するため、正月の床飾りや工芸意匠にも相応しく、厳しい寒さの中からいち早く芽吹く姿には生命の強さと新たな季節の喜びが重ねられています。
本作は全体を深い黒味に仕立てた赤銅地の笄で、胴の部分を一段掘り下げ、その面へ細かな魚子を打って画面を整え、中央へ1株の福寿草を高彫色絵でふっくらと表しています。上方に開く花は重なる花弁を1枚ずつ刻し、豊かな金色絵によって黒い魚子地から明るく浮かび上がらせ、茎と葉は赤銅の色調を生かして抑え、茎元の蕾には金色を添え、下方の根茎を銀色絵で表すことで、地中から芽吹き花開く植物の姿を1つの流れへまとめています。
花を正面へ平板に置かず、斜めに傾けて横顔を見せるよう配した構図も巧みで、花弁の起伏と中心の細かな粒立ちが光を受けるたび異なる陰影を生みます。細長い茎、葉先の反り、蕾を包む萼、絡み合う根まで形を変えて彫り分けているため、小さな1株の中に開花前後の生命の循環が凝縮され、広く残した魚子地の余白が可憐な姿を一層引き立てています。
耳掻側には対向する蕨手状の意匠を置き、裏面は赤銅地の黒い地肌が備える穏やかな艶と丸みを広く見せる簡潔な仕立てとして、表の色金と魚子の精緻さを際立たせています。遠目には黒地へ咲く黄金色の花が印象的に映り、手元では花弁、葉、茎、根茎の細工を順に辿ることができるため、季節の展示はもちろん、1年を通じて福寿の願いを託す収蔵品としても魅力的です。吉祥性の高い画題、深みある赤銅の色、精密な魚子、高彫色絵の量感が調和した、植物金工を好まれる方へおすすめしたい愛蔵向きの一品です。