松林流水橋図割笄 無銘 -Mumei- 16-262
通常価格:¥220,000
税込
松林流水橋図割笄
無銘
-Mumei-
全長19.33センチ 幅10.1ミリ 重さ28.3グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 桐箱
松は常緑の生命力と長寿を象徴し、絶えず流れる川は清浄と変わらぬ繁栄、橋は人と土地を結ぶ往来を表します。川を挟んで松林を配し、その流れへ橋を架ける景色は、自然の静けさと人の営みを1つに収める日本的な山水画題であり、細長い笄の画面へ奥行きと広がりを与える効果的な取り合わせです。
本作は黒味の強い赤銅地へ、川を挟んで広がる松林と、その両岸を結ぶ橋を高彫色絵で表した割笄です。松には金と銀を使い分け、川面を金色に輝かせる一方、橋は温かみのある素銅で表して橋脚へ金色絵を添えることで、赤銅地の深い黒味の中に金、銀、素銅の色調が鮮やかに浮かび上がり、限られた幅の中へ遠近と光の移ろいを作り出しています。
橋は割笄の2本をまたぐように配され、合わせたときには川を挟む松林の景観が1つに繋がり、分けて眺めれば、それぞれの片に松の繁み、川の流れ、橋桁や対岸の景色という異なる細工が現れます。金銀に輝く松と金色の川、素銅の橋が明快な色彩の対照を作りながら、橋脚へ置いた金色が画面を引き締め、角度を変えるたびに木漏れ日や水面のきらめきを思わせる変化を見せます。
形状にも工夫があり、雉子股には通例の木瓜形を置かず、蕨手の下から雉子股に至る胴の地を鎚目で荒らして細かな凹凸を作り、その素朴で力強い肌合いを華やかな山水図の背景として生かしています。裏面は装飾を抑えて赤銅地の黒い地肌と割笄の端正な合わせを見せるため、表面へ凝縮された風景と色金の輝きがいっそう際立ち、正面では金銀と素銅が織り成す色彩、斜めからは高彫と鎚目の起伏、片側ずつでは精巧な細部を味わえます。自然景と旅情を感じさせる画題に、定型にとらわれない姿と変化に富む地肌を組み合わせた、山水図金工や割笄を収集される方へおすすめしたい魅力豊かな一品です。