雲文図割笄 無銘 -Mumei- 16-259
通常価格:¥55,000
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雲文図割笄
無銘
-Mumei-
全長21.92センチ 幅10.7ミリ 重さ40.5グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 桐箱
雲文は、形を変えながら天空を巡る雲を曲線へ置き換えた文様で、恵みの雨をもたらす瑞祥として、また龍や神仙の住む天上世界を暗示する意匠として古くから用いられてきました。写実的な景物を描かずとも、線の伸び、渦、余白だけで風と空の広がりを感じさせるため、細長い笄の姿を生かす画題としても相応しいものです。
本作は柔らかな褐色を帯びた銅地の割笄で、耳掻側から胴へかけて流れる雲の輪郭を、細く端正な線彫によって長く連ねています。雲は一様な渦の反復ではなく、大きく膨らむ輪郭と小さく巻く先端を交互に配し、2本の境を越えて互いに呼応させることで、静かな地の上へゆるやかな気流を生み出しています。
華やかな色金や高彫に頼らず、鏨の線と地金の色だけで見せる抑制された仕立ては、簡潔であるほど線の乱れや構図の弱さが目立つ難しい仕事ですが、本作では広い余白を恐れず、雲を上方へ集めて長い棹へ静かに移る構成を採ることで、割笄全体の伸びやかさを損なっていません。正面では文様が地へ溶け込むように穏やかに見え、斜めから光を受けると線の陰影が立ち上がり、雲気が現れては消えるような奥ゆかしい変化を楽しめます。
裏面には細かな斜めの鑢目が広く残され、表の流麗な線彫とは異なる地肌の表情を見せています。2本を合わせた端正な姿、分けた際に明らかになる左右の文様配分、長い年月を経た地金の微妙な濃淡まで鑑賞の対象となり、装飾を抑えた刀装具ほど素材と造形を重んじる愛好家にとって見逃せない魅力があります。雲文の抽象性はさまざまな拵へ調和しやすく、単独で飾れば静かな品格を漂わせる、古雅な味わいに富んだ一作です。