九曜紋二双図笄 無銘(京金工) -Mumei- 16-249
通常価格:¥275,000
税込
九曜紋二双図笄
無銘(京金工)
-Mumei-
全長21.25センチ 幅12.6ミリ 重さ35.4グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
京金工とは、京都で制作された無銘の刀装具のうち、個別の作者や一派まで特定することが難しい作に用いられる鑑定上の呼称です。公家文化と武家文化が交わる京都では多様な金工が活動し、赤銅、魚子、金色絵などを用いた品位ある小道具が制作されましたが、「京金工」という極め自体は特定一門への所属や後藤家との直接的な師承を示すものではありません。本品の端正な造形と抑制された色彩には、京都で育まれた洗練された美意識がよく表れています。
九曜紋は、中央の一星を八つの星が取り囲むように配した星辰信仰に由来する文様で、天体の運行や方位を象徴するとともに、災厄を退けて家運を守る意匠として武家の家紋にも広く用いられました。本品では同じ大きさの九曜紋を二つ、細長い笄の胴へ間隔を整えて据えることで、反復する円の秩序と豊かな余白を両立させ、華やかな金色を用いながらも落ち着いた格式を感じさせる画面にまとめています。
笄全体を黒味を帯びた赤銅で造り、胴の表には微細な魚子を隙なく打ち揃え、その静かな地へ二つの九曜紋を高彫金色絵でふっくらと表しています。中央の星をやや大きく、その周囲へ八星を均整よく巡らせた構成は、個々の円形にわずかな肉を持たせることで柔らかな光を受け、正面では家紋の形が明快に浮かび、角度を変えれば一星ずつ異なる陰影が現れます。
二つの紋は同じ大きさと向きで揃えられ、片方を主、もう片方を従とせず同格に見せることで、「二双図」と呼ばれる意匠に整然としたリズムを与えています。魚子の細かな粒立ちと円形の金紋が互いを引き立て、広く残した余白が各紋の輪郭を一層鮮明に見せるため、装飾を詰め込まずとも確かな存在感があり、簡潔な家紋表現の中に金工師の正確な構成力と柔らかな肉取りを味わえます。
耳掻部から棹、先端まで一貫して赤銅で造られた姿は細身で伸びやかに整い、裏面は装飾を置かない赤銅磨地として、表の緻密な魚子と金色絵との対照を明瞭にしています。長い年月を経た地金の穏やかな色艶も一様な新しさにはない魅力を添え、手元で表裏を返すたび、赤銅の深い黒味、金色絵の柔らかな輝き、笄本来の端正な造形を順に味わえます。
日本美術刀剣保存協会において「京金工」と極められ、精緻な魚子、肉取りの整った九曜紋、黒と金を生かした品位ある配色に加え、保存刀装具鑑定書によって鑑賞上の位置付けも明確であり、家紋意匠や星辰文を好まれる方はもちろん、確かな極めを備えた質の高い笄を求める方にもおすすめしたい、静謐さと華やかさを兼ね備えた一品です。