馬具図笄 無銘 -Mumei- 16-248
通常価格:¥154,000
税込
馬具図笄
無銘
-Mumei-
全長21.9センチ 幅11.7ミリ 重さ30.8グラム
江戸中期 The middle period of Edo era
附属 桐箱
馬具は武士の移動と武芸を支え、鞭と鞍は馬上の姿を思い起こさせる取り合わせですが、本品は馬そのものを描かず、使い手を待つ二つの道具だけを細長い笄の画面へ端正に配し、凜とした武家の気配を静物のような落ち着きの中に漂わせています。本体は山銅地と見られ、その温かな褐色と、胴に設けた黒い赤銅魚々子地との対照も美しく、手元へ引き寄せると色金の細部が次々に現れる、眺める距離によって趣を変える一品です。
胴には赤銅地に魚々子を打った地板を嵌め、細かく揃った粒立ちを背景に鞭と鞍を浮かび上がらせています。中央の鞍は前輪と後輪に銀色絵を施し、前後の湾曲した形と重なりを彫り分けることで、限られた幅の中にも鞍の構造とふくらみを感じさせ、黒い魚々子地の上で銀色の縁が静かに光ります。鞍に添えられた緒は腹帯を思わせるもので、金色絵の細い線が中央の金具を巡り、鞍の量感を引き締めながら画面へ軽やかな動きを添えています。
鞭は鞍に重ね、先端を笄の穂先へ向けて配し、持ち手とそこに伴う紐には金色絵を用いて、黒い柄の部分から先端へ続く線の変化を鮮やかに見せています。金色の紐が曲がり、結ばれ、房のように垂れる細部を追うと、硬い金具としなやかな緒とが異なる質感で表されていることが分かり、鞍の銀色との取り合わせも過度に華美にならず、馬具を整えて今まさに出立するかのような気配を生みます。
魚々子を打った赤銅地の輪郭は胴の形に沿って丁寧に収められ、頭部から細く伸びる先端まで、装飾を置く場所と地金を見せる場所との釣り合いがよく、裏面には滑らかな山銅地の表情を残して、表の細密な仕事をいっそう引き立てています。正面からは鞭と鞍がつくる引き締まった構図、角度を変えれば前輪と後輪の起伏や緒の彫りが現れ、拵に取り合わせる楽しみと、手元で彫金の細部を味わう楽しみを兼ね備えた、馬具図ならではの端正で洒落た笄です。