八木瓜形八つ雁金車透鐔 無銘 -Mumei- 12-1873
通常価格:¥88,000
税込
八木瓜形八つ雁金車透鐔
無銘
-Mumei-
縦84.8ミリ 横84.8ミリ 切羽台厚4.5ミリ
重さ83グラム
江戸末期 The end of Edo period
附属 桐箱
雁は秋に飛来し、春には列を整えて北へ帰ることから、古来、便りを運ぶ鳥、旅の安全、仲間との結び付き、秩序を象徴する吉祥の存在として親しまれ、その姿を簡潔な紋へまとめた雁金は武家の家紋や染織、漆工、刀装具にも広く採り上げられてきました。本品に表された「八つ雁金車」は、図案化された雁金を八方へ放射状に組み合わせた意匠であり、八方へ緩やかに張り出す八木瓜形の輪郭と響き合いながら、軽快な律動と伸びやかな広がりを生み出しています。
八木瓜形の鉄地いっぱいに八つ雁金車を展開し、切羽台の周囲へ八つの円弧を花弁状に巡らせ、その外側へ簡潔に図案化した雁金文を放射状に配しています。中心に一輪の花が開き、その周囲へ吉祥の雁金が連なるようにも見える二重の意匠は、正面から眺めれば整然とした均衡を示し、僅かに角度を変えれば厚みのある鉄線と透かしの奥行きが際立つ、工夫に富んだ構成となっています。
耳は八方へ緩やかに張り出す八木瓜形に仕立て、各部を雁金の輪郭へ自然に繋ぎながら十分な肉を残しているため、広く地を透かした軽快な外観でありながら鐔としての堅牢さも損なわれていません。切羽台には装着によって生じた穏やかな痕跡が残り、鉄地には黒褐色の落ち着いた古色がよく馴染んでおり、表裏をほぼ同じ意匠で仕立てた簡潔さが、鏨の運び、鉄線の太細、花弁状の透かしと雁金を一続きに見せる巧みな地透の仕事を一層明確に伝えています。
無銘ながら、84.8ミリ四方の大振りな鐔面を破綻なくまとめた設計、八木瓜形の外形と八つの花弁状の円弧、八つの雁金文を均整よく呼応させた精度、実用性を保ちながら余白を大きく生かした透かしには、江戸末期の装飾性豊かな透鐔らしい端正さと力強い鉄味が調和しています。雁金という武家好みの吉祥意匠を、遠目にも映える華やかな構成へ昇華した本品は、古鐔として飾った際の存在感に富むだけでなく、透鐔を主役とする拵へ合わせても輪郭が鮮やかに映え、大振りな鉄鐔を好まれる方におすすめしたい、品格と親しみやすさを兼ね備えた一枚です。