無銘 -Mumei- 2-1910
通常価格:¥440,000
税込
無銘
-Mumei-
刃長70.6センチ 反り0.9センチ
元幅30.9ミリ 元重ね6.75ミリ
物打幅25.1ミリ 横手位置幅22.5ミリ
物打重ね6.0ミリ 松葉先重ね5.3ミリ
目釘穴2個
裸身重量761グラム 拵に納めて鞘を払った重量1122グラム
江戸前期 The early period of Edo era
平成7年5月9日 東京都登録
附属 銀はばき、茶石目蝶貝微細散刻鞘変塗鞘打刀拵
本作は江戸前期に制作されたと考えられる無銘の刀で、刃長70.6センチ、反り0.9センチ、元幅30.9ミリを測り、元先の幅差が頃合いよく開いて中切先へ結ぶ、引き締まった体配を備えています。表裏には刀樋を掻き通し、身幅を保ちながら姿へ軽快さを添えており、裸身重量761グラムという充実した量感の中にも、伸びやかで均整の取れた印象を与えます。
地鉄は小板目がよく錬れて詰み、細やかな地沸が付く精美な鍛えで、その内には微細な地景が現れ、光を受ける角度を変えるたびに落ち着いた肌合いの中から鍛錬の表情が静かに浮かび上がります。刃文は湾れを基調として互ノ目を交え、匂口は明るく深みがあり、刃縁には繊細な砂流がかかって、刃中へ太く短い足が入る変化に富んだ出来。穏やかな湾れの流れと互ノ目の抑揚、砂流の細かな働きが互いを引き立て、華美に偏ることなく、古刀の余韻を残した江戸前期の刀らしい力強さと品格を味わわせます。
鋩子は焼きがたっぷりと入り、一枚に近い豪壮な景色を見せながら先大丸に返り、刀身全体の見どころを切先まで途切れさせません。無銘であるため特定の刀工へ安易に極めることはできないものの、整った姿、よく錬れた地鉄、明るい匂口と豊かな刃中の働きが本作そのものの確かな見応えを物語っており、銘や流派だけにとらわれず、刀身の出来をじっくりと鑑賞したい方にこそおすすめしたい一振です。
附属する打刀拵は、落ち着いた茶石目地へ細かな蝶貝を散らした変わり塗鞘を備え、渋みのある茶色の地に、光を受けた蝶貝が控えめな輝きを浮かべます。遠目には静かで端正な印象を保ちながら、手元で角度を変えると細かな貝片が星のように現れ、華美に走らず奥ゆかしい装飾性を楽しめる仕立て。鞘は全体に柔らかな起伏を持たせた刻鞘となっており、量産的な直線の鞘とは異なる、有機的で愛嬌のある輪郭にも注文造りらしい趣向が感じられます。
銀はばきの端正な光沢と、茶石目地へ蝶貝を散らした鞘の穏やかな華やかさが刀身の精美な地刃とよく調和し、鞘を払った重量は1,122グラムながら重心は手元に寄り、手に取ると数値以上にまとまりの良さを感じさせます。刀身だけでなく、拵と組み合わせた姿にも明確な個性があり、飾った際には落ち着きのある存在感を示し、手元では地鉄、刃文、変わり塗鞘という異なる鑑賞要素を順に楽しめる、内容の充実した一振です。
現在、柄には僅かながたつきがあり、鐔鳴りも認められます。歴代の所有者が好みに応じて鐔を替えたためか、柄の目釘孔には使用による広がりが見られ、登録証には目釘穴2個と記載されているものの、精査すると最下段には鉄で埋められた目釘穴の痕跡も確認できます。こうした点は長く実用の中で受け継がれてきた来歴を物語る一方、実際の使用を想定される場合には、専門職による柄周りの点検と調整をおすすめします。
江戸前期の力強さを伝える端正な刀身に、蝶貝が静かに輝く個性的な変わり塗鞘打刀拵を伴い、地鉄と刃文を見込む楽しみ、拵を飾る楽しみ、そして手を掛けながら次代へ伝える楽しみを一体として味わえる本作は、無銘刀の中から出来と趣を重視して選ばれる方に相応しい、味わい深い一振です。