波濤に雨龍図透鐔 無銘 -Mumei- 12-1867
通常価格:¥198,000
税込
波濤に雨龍図透鐔
無銘
-Mumei-
縦73.0ミリ 横69.5ミリ 切羽台厚5.5ミリ
重さ105.8グラム
江戸中期 The middle period of Edo era
雨龍は水にゆかりの深い霊獣であり、本品は一匹の雨龍が波濤の上に身を躍らせる姿を、丸形の鉄地いっぱいに描いた透鐔です。龍は顔を右へ向け、長い身体を右回りに巡らせて切羽台を挟み込むように構え、その下で激しく巻き返す波と呼応して、静止した一枚の鐔に今にも動き出しそうな勢いを与えています。
上方の龍頭は角や眉、目元から口先へと起伏を付け、鬣の細い彫りが後方へ流れることで進む方向をいっそう明らかにし、身体には鱗を描かず、しなやかな輪郭と丸みを帯びた彫りで量感を表すため、込み入った画題ながら雨龍の姿をすっきりと追うことができます。切羽台の左右に開けた櫃穴も構図の一部として収まり、龍体と外周の間に大小の透かしを設けたことで、力強い鉄地と軽やかな余白との釣り合いがよく、角度を変えるたびに頭部や身体の彫りが異なる陰影を見せます。
下方の波は幾重にも盛り上がる波頭を連ね、渦を巻く部分と細く抜いた部分を交互に配して、龍の進む先に荒れる水面を立体的に見せています。龍の腹に沿う金象嵌は黒い鉄肌の中で流れるような線を描き、波しぶきに散る小さな金の点と響き合って、荒波のきらめきまで感じさせる仕上がりで、金色を一か所に集めず画面の各所へ配したところにも、目を巡らせる楽しみがあります。
裏面は、表に表された一匹の雨龍と波濤の裏模様がそのまま続き、表裏を返して見比べると、透かしのつながりや波の重なり、龍体の起伏が別の角度から読み取れます。側面からは切羽台厚5.5ミリのしっかりした造りに加え、前後に高さを変える彫りの仕事も確かめられ、平らな写真だけでは伝わりにくい奥行きが、この鐔を手元に取る鑑賞の喜びとなります。
一匹の雨龍を主役に据え、波の勢いと金象嵌のきらめきで画面を満たした本品は、拵に掛ければ落ち着いた鉄色の中に鮮やかな景色が現れ、単体で眺めれば彫りと透かしの細部を表裏から味わえる、迫力と鑑賞性を兼ね備えた一枚です。