鉄線薄図鐔 無銘(会津正阿弥) -Mumei (Aizu Shoami)- 12-1859
通常価格:¥275,000
税込
鉄線薄図鐔
無銘(会津正阿弥)
-Mumei (Aizu Shoami)-
縦84.7ミリ 横81.7ミリ 切羽台厚4.18ミリ
重さ179.0グラム
江戸中期 The middle period of Edo era
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
正阿弥は室町時代以来の長い伝統を持ち、各地へ分流して土地ごとに特色ある鐔を制作した金工の大系で、会津正阿弥は会津地方で展開した一派として、鉄地の持ち味を生かしながら彫りと象嵌、色絵を組み合わせた装飾性豊かな作を残しています。本品は無銘ながら「会津正阿弥」と極められ、堅丸形、鉄地、据紋象嵌色絵、土手耳と記載された、同派の特色を端正に伝える鐔です。
表面の主題である鉄線は、細くしなやかな蔓に似合わず丈夫なことから「鉄線」の名を持つ蔓性植物で、初夏に整った花を開き、絡み合いながら伸び続ける姿には強い生命力と末永い繁栄への願いが重ねられてきました。本品では蔓を大きく円環状に巡らせ、その間へ葉、蕾、巻きひげを配し、三輪の花を金色絵によって鮮やかに咲かせており、花芯には放射状の細線を刻して、華やかな金の面へ繊細な表情を加えています。蔓が切羽台を囲みながら左右の櫃孔の間を縫う構成は伸びやかで、花、蕾、葉の大小と巻きひげの曲線が静かな鉄地へ心地よい律動を生み出しています。
裏面には薄を大きく配し、弧を描く葉と茎を据紋象嵌で表す一方、風に揺れる穂先へ金色絵を施して、秋野の澄んだ空気を簡潔な構図の中へ凝縮しています。花と蔓を密度高く巡らせた表面に対し、裏面では余白を広く取り、黒く引き締まる葉と黄金色の穂を対照させることで、鐔を返した際に季節も景色も一変する趣向となっており、初夏の鉄線と秋の薄という異なる季節の植物を表裏で味わえる点にも、鑑賞の奥行きがあります。
鉄地は穏やかな鎚の表情と深い褐色の古色を備え、輪郭を巡る土手耳が84ミリを超える堅丸形の姿を力強く引き締めています。据紋象嵌は蔓の細い線、重なり合う葉先、薄の長い茎に至るまでよく保たれ、金色絵にも目立った抜けがなく、黒褐色の鉄地、艶のある据紋、明るい金の3つの色調が明瞭に響き合い、小柄櫃穴は赤銅で丁寧に埋められ、茎孔の上下には素銅の責金を残しているため、実際に拵へ用いられてきた歴史を伝えながら、意匠全体のまとまりも損なっていません。
179グラムの充実した量感を持つ大振りの鉄鐔でありながら、重厚さだけに傾かず、鉄線の細い蔓と巻きひげ、薄の風になびく穂先を軽やかにまとめた構成には、会津正阿弥らしい鉄味と装飾性の調和が表れています。保存刀装具鑑定書を備え、象嵌と色絵の保存状態にも恵まれた内容は収集上の魅力が高く、大型鐔の堂々たる存在感、季節感に富む草花意匠、鉄と金の鮮明な対比を一度に楽しめる、展示映えのする見応え豊かな作品です。