唐草に双龍図透鐔 無銘(南蛮) -Mumei (Nanban)- 12-1855
通常価格:¥143,000
税込
唐草に双龍図透鐔
無銘(南蛮)
-Mumei (Nanban)-
縦83.4ミリ 横78.6ミリ 切羽台厚5.6ミリ
重さ138.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
南蛮鐔は、海外との交流を通じてもたらされた異国趣味を背景に江戸時代を通して制作され、とりわけ江戸中期に広く好まれた鐔の一群です。龍や唐草、異国文字、南蛮船などを鉄地へ密度高く配し、細かな地透と金銀の布目象嵌を組み合わせる作が多く、余白を生かす和様の構成とは趣を異にする、複雑で華麗な装飾性を特色としています。
本品は切羽台の左右へ2頭の龍を向かい合わせ、その長い身体を渦巻く唐草へ溶け込ませるように配した作品で、上下に置かれた異国風の飾りが構図の軸となり、視線を中央から外周へ導きます。龍は水を司る霊獣として守護や飛躍を象徴し、互いに呼応する双龍には力の均衡と調和への願いが重ねられており、唐草が絶え間なく伸びる姿も繁栄と生命力を想起させるため、異国情緒の中に吉祥性を豊かに備えた画題となっています。
5.6ミリの厚い鉄地を深く抜き、細い龍身と幾重にも交差する蔓を耳や切羽台へ巧みに連結することで、繊細な透彫でありながら武具としての強度を保っています。斜めから眺めると文様の重なりと彫りの深さが明瞭に現れ、平面では捉えきれない立体的な奥行きを味わえるほか、表裏の龍や唐草などの要所へ施された金布目象嵌が、黒褐色の鉄地から複雑な文様の流れを鮮やかに浮かび上がらせています。さらに耳には数珠を連ねたような凹凸を丹念に施し、その全面にも金布目象嵌を巡らせているため、正面だけでなく側面から眺めた際にも細かな金の輝きが続き、濃密な意匠を華やかに引き締めています。
表裏とも手を抜かず唐草と双龍の意匠を展開しているため、鐔を返すたびに透かしの連なりと金色の配置が異なる表情を見せ、白い背景では精緻な輪郭が、黒い背景では残存する金象嵌が際立ちます。大振りの姿と138グラムの確かな量感が濃密な画面をしっかりと支え、手元で細部を読み解く鑑賞性はもちろん、黒漆鞘や金具を抑えた拵へ合わせればひときわ映える存在感を備えており、南蛮鐔特有の異国的な意匠、深い透彫、鉄と金の鮮明な対照を一体として楽しめる見応えのある作品です。