八角形金象嵌紋散鐔 無銘 -Mumei- 12-1852
通常価格:¥66,000
税込
八角形金象嵌紋散鐔
無銘
-Mumei-
縦80.0ミリ 横78.75ミリ 切羽台厚4.1ミリ
重さ144.5グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
端正な八角形の鉄地へ小さな金象嵌文を環状に散らした、簡潔ながら品格ある鐔です。八角は四方と四隅を合わせた八方を示し、古くから安定、発展、方除けに通じる形として尊ばれてきました。本品では各辺をほぼ均等に整えた直線的な輪郭と、中央に大きく残した鉄地の余白が静かな緊張感を生み、丸形鐔とは異なる凛とした佇まいを見せています。
鉄地は平滑に仕立て、外周へ細い段を巡らせて八角形の稜線を明瞭に引き締めています。左右の櫃孔は実用を意識したゆったりとした形に開けられ、茎櫃孔の周囲には刀へ合わせて調整された鏨跡が残るため、長く拵に用いられてきた時代鐔としての趣も感じられます。装飾を地一面へ広げず、形そのものと鉄味を鑑賞の中心に据えた造りには、江戸前期から中期の武具らしい実用性と抑制がよく表れています。
金象嵌文は表面へ6箇所、裏面へ3箇所を配し、それぞれをわずかに方向を変えながら外形に沿わせることで、広い鉄地の中へ穏やかなリズムを作っています。黒褐色の地へ小粒の金が浮かぶ対照は華美に傾かず、正面では端正な秩序を、光を傾けた際には金文が順に現れては沈む奥ゆかしい変化を楽しませます。なお、金象嵌の一部が欠落した箇所が3箇所ありますが、残された文様から当初の配置と意匠は十分に鑑賞できます。
派手な高彫や多量の色金を用いず、八角形の造形、落ち着いた鉄味、控えめな金象嵌だけで見せる潔さが本品の魅力です。黒漆鞘へ合わせれば金文が品良く映え、朱や金梨子地の鞘へ添えても直線的な輪郭が全体を引き締めるため、実際の拵への合わせやすさにも優れています。古風な八角形鐔や余白を生かした金象嵌を好まれる方におすすめしたい、静かな存在感と武具らしい重厚さを備えた作品です。