流水に薄図透鐔 無銘 -Mumei- 12-1850
通常価格:¥132,000
税込
流水に薄図透鐔
無銘
-Mumei-
縦77.35ミリ 横75.05ミリ 切羽台厚6.0ミリ
重さ110.9グラム
江戸前期 The early Edo period
画題は、流れのほとりに穂を垂れる薄を表した「流水に薄」です。薄は秋の七草の一つとして古くから和歌や絵画に詠まれ、風にそよぐ細い葉と柔らかな穂が秋の深まりを伝える植物であり、絶えず形を変えながら進む流水との取り合わせには、季節の移ろいと水辺の静かな風情が重ねられています。
下方には幾重にも巻き返す水流を太く伸びやかな曲線で透かし、その右方から立ち上がる薄の茎を切羽台の上へ大きく渡しながら、左下に向かって穂を垂らしています。右から左へ弧を描く数枚の細長い茎、切羽台の上方を斜めに横切る葉、左方で重みを受けて頭を垂れる穂が一続きとなり、風に揺れる薄と水の動きを、鉄の線だけで巧みに描き出しています。
切羽台の厚みは6.0ミリを確保し、透かしの間に残された鉄の線も要所で耳や切羽台へ確実に繋がるため、開放感ある構図でありながら武具としての力強さを失っていません。丸耳には穏やかな丸みが付き、厚い鉄地の断面と古色を帯びた肌が、正面だけでなく斜めから眺めた際にも深い陰影を生み、波頭の渦や薄葉の細長い輪郭を一層鮮明に見せます。
色金や細密な彫刻に頼らず、厚い鉄地を大胆に透かして水と植物の動きを表したところに本品の魅力があり、下方の力強い渦と上方の軽やかな葉、左へ垂れる穂の柔らかさが釣り合うことで、静と動を一枚の鐔面に収めています。光を通せば流水の空間が大きく開き、薄の茎葉が明快な影となって現れるため、手元で鉄味を鑑賞するだけでなく、展示した際にも古透ならではの輪郭美がよく映えます。江戸前期の古風な構成、大振りな姿、6.0ミリの厚い鉄地、秋の水辺を詩情豊かに表した意匠を併せ持つ、簡潔でありながら見飽きない鐔です。