時計猪目透鐔 無銘 -Mumei- 12-1849
通常価格:¥77,000
税込
時計猪目透鐔
無銘
-Mumei-
縦77.0ミリ 横76.2ミリ 切羽台厚4.3ミリ
重さ79.5グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
無銘の鉄地透鐔で、切羽台を囲む鋭い歯の連なりは時計の歯車を思わせ、内外二重の輪と天地左右の太い繋ぎによって機械の仕組みを一枚の鐔へ移したような、簡潔ながら目を離しがたい図案を形づくっています。
江戸の和時計は、西洋から伝わった機械時計を、季節によって昼夜の一刻の長さが変わる日本の時刻制度に合わせて工夫したもので、歯車が噛み合って時を刻むその仕組みを本品では大胆に鐔の意匠へ取り込み、ふだんは器物の内に隠れている精巧な働きを目に見える造形へと変えたところに、時計という画題ならではの機知と当時の技術への関心が感じられます。
歯車の斜め四方には小さな猪目を透かし、直線的な歯先の間に柔らかな曲線を忍ばせているため、正面からは規則正しい回転の気配が浮かび、近寄れば四つの猪目に気づくという二段の楽しみがあり、時計という精巧な器物への関心と刀装具らしい洒落た意匠が無理なく重なっています。
外輪と内輪の間を大きく透かしながら四方の幅広い繋ぎで支えた造りは、軽やかな見た目と鐔としての確かさを両立させ、細く巡る内輪、鋭く刻まれた歯、厚みを残した外輪へと視線を移すほど、単純な円形の中に置かれた線の太細と余白の取り方の巧みさが見えてきます。
笄櫃穴は鉛と思われる灰色の金属で丁寧に埋められ、もう一方の櫃穴を開けたままにした姿には実際の拵へ合わせて用いられた趣が残り、落ち着いた鉄色と古色を帯びた埋金が、規則正しい歯車の造形へ時代物ならではの表情を添えています。
遠目には力強い輪の構成が明快に映り、手元では斜め四方の猪目、透かし際の仕事、笄櫃穴の埋め方まで次々と発見があるため、時計の歯車という珍しい画題を楽しむ方にも、装飾を抑えた鉄地透鐔を好む方にも薦めたい一枚です。