葵蕗蓬図透鐔 越前住長時作 -Echizen ju Nagatoki- 12-1840
通常価格:¥132,000
税込
葵蕗蓬図透鐔
越前住長時作
-Echizen ju Nagatoki-
縦72.65ミリ 横70.0ミリ 切羽台厚5.05ミリ
重さ83.6グラム
江戸中期 The middle Edo period
長時に関する生没年、師系、具体的な活動期間を示す確実な記録は手元資料では確認できませんが、肉厚な鉄地を用いた力強い地透、植物の葉脈を彫り込む表現、文様を丸耳へ確実につないだ堅牢な構成には越前記内の作風と通じるところがあり、記内派に連なる金工であった可能性が考えられます。越前では江戸時代を通じて鉄地透鐔の制作が盛んであり、本品も同地の金工文化を背景に生まれた、鉄味と透かしの造形を味わえる作品です。
画題は、葉姿の異なる葵、蕗、蓬を一枚の鐔面へ取り合わせたものです。下方に1枚の葵葉、右上には放射状の葉脈を刻んだ大きな蕗葉、左上には深く裂ける蓬葉を配し、花や実を加えず、葉の輪郭と葉脈だけで豊かな変化を作り上げています。葵の端正な葉形に、蕗の量感と蓬の細やかな表情を重ねた構成は、身近な草葉を格調ある透かし意匠へ昇華したもので、3種を見分けながら鑑賞できるところにも趣があります。
鉄地は5ミリを超える厚みを保ち、葉と茎を広く彫り残しながら余白を大胆に透かすことで、重厚さと軽快さを併せ持つ画面を形成しています。表裏には葉脈を筋彫で刻み、葵の丸みを帯びた葉面、蕗の大きく波打つ葉縁、蓬の細かな切れ込みを彫り分けており、斜めから眺めると肉厚な透かしの奥行きと柔らかくうねる茎の流れが一層明瞭に現れ、静かな草葉の画題へ豊かな奥行きとまとまりを与えています。
落ち着いた黒褐色の鉄味、丸耳へ無理なくつながる安定した構成、3種の葉をそれぞれ異なる線と面で見せる彫りの工夫が調和し、派手な色金に頼ることなく鉄そのものの質感と透かしの陰影を存分に楽しめます。「越前住長時作」の銘を備え、越前鉄鐔らしい力強さの中へ植物の柔らかな生命感を映した、手元で見込むほど味わいを増す魅力的な鐔です。