丸に揚羽蝶紋透鐔 無銘 -Mumei- 12-1838
通常価格:¥132,000
税込
丸に揚羽蝶紋透鐔
無銘
-Mumei-
縦82.6ミリ 横81.8ミリ 切羽台厚5.3ミリ
重さ134.5グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
揚羽蝶は、その優美な姿に加え、幼虫から蛹を経て空へ羽ばたく変化から再生や不死へ通じる吉祥文として親しまれ、平家をはじめ多くの武家が家紋に採り入れてきました。雅やかな姿の内に、絶えることなく生まれ変わる生命力と武家の誇りを重ねた文様であり、刀装具に表された蝶には単なる草虫図とは異なる格調と象徴性があります。
本品は丸輪の内へ翅を大きく広げた揚羽蝶を透かし、鐔面のほぼ全域を1匹の蝶で満たした堂々たる構成です。左右の翅は同形に揃えず、輪郭、透かし、羽脈の流れへそれぞれ変化を持たせながら、触角、脚、尾状突起を丸耳へ巧みに繋ぐことで、刀装具としての強度を保ちつつ、生き物らしい躍動感と紋章的な力強さを両立させ、厚い鉄地そのものを翅と身体へ変えた造形には、武家の家紋に相応しい威厳と蝶という画題が持つ華やかさが鮮明に表れています。
翅には渦文、羽脈、細かな筋を毛彫で刻み、眼、触角、翅の一部へ金布目象嵌を施しているため、落ち着いた黒褐色の鉄地に金の光が点々と浮かび、見る角度によって意匠の表情が変化します。翅の外縁へ連ねた丸い透かしや、先端を巻き込む触角の曲線にも細やかな趣向が行き届き、小柄櫃穴は赤銅で丁寧に埋められており、その深い色調が鉄地と自然に馴染みながら、実際に拵へ用いられてきた伝来の姿を伝えています。
82ミリを超える大振りな外形、5.3ミリの厚み、134.5グラムの量感が、細部まで充実した蝶の意匠をしっかりと支え、正面では大透の輪郭が明快に浮かび、斜めからは肉を残した翅と透かし際の奥行きが際立ちます。古色を帯びた鉄、部分的に残る金布目象嵌、赤銅の埋金が互いを引き立てる景色には、華やかさだけに偏らない落ち着いた風格があり、蝶紋を主題とする拵の中心に据えることはもちろん、家紋鐔や大振りな古透鐔の収集品としても強い存在感を放つ作品です。