七宝繋透鐔 無銘(京透) -Mumei (Kyo-sukashi)- 12-1836
通常価格:¥143,000
税込
七宝繋透鐔
無銘(京透)
-Mumei (Kyo-sukashi)-
縦73.4ミリ 横69.5ミリ 切羽台厚3.9ミリ
重さ62.5グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
京透は京都を中心に発達した鉄地透鐔の一群で、その成立は室町時代後期まで遡るとされ、桃山時代から江戸時代前期にかけて洗練を深めました。鉄地を巧みに彫り透かし、余白そのものを図柄へ取り込みながら、左右や上下の均衡を重んじた端正な構成を特色とし、武具としての堅牢さを保ちながら、光と空間によって文様を見せる簡潔で格調高い美しさが大きな魅力です。本作には、細い鉄線を規則正しく連ねる精緻な透かしと、広く落ち着いた切羽台、丸く引き締まった耳が備わり、古式の京透が持つ清雅な趣をよく伝えています。
画題の七宝繋は、同じ大きさの円を重ね合わせ、花弁のような形を連続させる伝統文様です。「七宝」の名は仏教で尊ばれる金、銀、瑠璃などの宝物に通じ、円が途切れず連なる姿から、人と人との縁、円満、繁栄、家運の継続を象徴する吉祥文として愛されてきました。本作では、七宝の円環を単独で大きく見せるのではなく、小さな単位へ分けて鐔面全体へ隙間なく展開し、どこまでも文様が続いていくような広がりを生み出しています。意匠の意味と透かしの構造が自然に重なり、良縁と繁栄への願いを、鉄と空間のみで静かに表した品格ある構成です。
制作には、鉄地から数多くの小さな空間を彫り抜き、交差する円環の線だけを細く残す緻密な仕事が求められます。個々の七宝文はほぼ均等な大きさに揃えられ、隣り合う輪が滑らかに繋がりながら、切羽台、両櫃穴、耳へ無理なく収束しており、細い部分を多用しても全体の強度と均衡を損なわない構成には、透かし彫りを熟知した金工の技量が表れています。切羽台には余分な装飾を置かず、広い鉄地を静かに残すことで、周囲に密集する七宝繋との対照を作り、黒褐色の地肌と細かな透かしが互いを引き立てています。茎櫃の上下には素銅の責金が残され、実際に刀へ装着され、大切に用いられてきた来歴を感じさせます。
正面から眺めると緻密な七宝文が端正な円形の中へ整然と収まり、斜めから見れば切羽台厚3.9ミリの地を深く抜いた透かしの奥行きと、丸みを帯びた耳の量感が現れます。白い背景では個々の文様と彫りの精度が鮮明になり、黒塗鞘へ合わせれば空間へ鞘色が溶け込み、鉄線の連なりだけが繊細に浮かび上がるため、展示する環境や拵への取り合わせによって異なる表情を楽しめます。七宝繋という吉祥性の高い画題、京透らしい均整、鉄地をここまで細かく彫り抜いた技巧が調和しており、華美な色金に頼らず、鉄そのものの質感と透かしの美しさを味わいたい方へおすすめしたい、清楚さと格調を兼ね備えた見応えのある鐔です。