扇面扇骨透鐔 無銘 -Mumei- 12-1829
通常価格:¥88,000
税込
扇面扇骨透鐔
無銘
-Mumei-
縦87.2ミリ 横87.2ミリ 切羽台厚3.4ミリ
重さ123グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
鉄地の右上へ扇面を置き、下方へは扇骨を離して配した、洒落味豊かな地透鐔です。扇を構成する扇面と扇骨をあえて分け、それぞれを一つの画面へ取り合わせた構成は視線を右上から下方へ大きく導き、広い丸形の余白を生かしながら、扇が開く動きと末広がりの姿を印象深く伝えています。
右上の扇面には松皮菱紋を陰陽に透かし、鉄を残して形を示す陽の表現と、地を抜いて輪郭を見せる陰の表現を対照させることで、限られた扇面の中へ変化に富んだ文様を作り上げています。下方の扇骨も象嵌ではなく細い地透によって表され、要を中心として親骨と中骨が左右へ開く姿を簡潔な線で捉えており、太く残した鉄地と細く鋭い透かしの対比には、静かな画面の中へ緊張感を生み出す巧みな構成力がうかがわれます。
大振りで比較的薄い鉄地へ文様を疎らに配し、広い余白そのものを意匠として生かした姿には古式の透鐔らしい伸びやかさがあり、透かし際の柔らかな手仕事、落ち着いた黒褐色の鉄味、端正な丸耳にも時代を経た趣がよく現れています。左右に設けた小柄櫃と笄櫃を構図の中へ自然に収めながら、扇面と扇骨を右上と下方へ大きく振り分けた大胆な配置は、余白の多い画面でありながら間延びを感じさせず、鐔を返して眺めても文様の輪郭と鉄地の表情を存分に楽しめます。
扇は末広がりの姿から発展と繁栄を象徴し、武家の調度や能楽とも深く結び付く格調ある画題であり、松の樹皮を菱形に見立てた松皮菱もまた、端正な幾何学性と古典的な品位を備えた文様として親しまれてきました。本品は扇面、松皮菱紋、扇骨という関連する意匠を単に並べるのではなく、陰陽の透かしと太細の異なる地透を使い分けることで、黒い鉄地の中へ軽やかな動きと奥行きを生み出しており、87.2ミリの堂々たる姿、時代を経た鉄味、祝意に富む画題が一体となった、古式の透鐔を好まれる方へおすすめしたい魅力ある一枚です。