丸に重ね釘抜紋透鐔 無銘 -Mumei- 12-1827
通常価格:¥77,000
税込
丸に重ね釘抜紋透鐔
無銘
-Mumei-
縦74.9ミリ 横75.5ミリ 切羽台厚5.1ミリ
重さ117グラム
江戸中期~後期 The middle to latter Edo period
附属 桐箱
丸い外輪の内へ、二枚の方形を角度を違えて重ねた「丸に重ね釘抜紋」を大きく透かし表した、端正で力強い素銅地の鐔です。釘抜紋は、古い釘を抜く際に梃子を掛ける正方形の座金を図案化した家紋であり、単純な方形を重ねることで八方へ張り出す変化に富んだ輪郭を生み出しています。また「釘抜」の音が多くの城を攻め抜く「九城抜き」に通じるとも解され、堅固なものを打ち破る尚武的な吉祥紋として武家に好まれた意匠です。
意匠の中心となる重ね釘抜は、正方形と菱形を重ね合わせたような広い地を堂々と残し、その外側へ台形状の透かし、重なりの内側へ小さな三角形の透かしを規則正しく配して、二枚の座金が交差する構造を巧みに見せています。外へ張り出す四方の角を丸耳へ接続することで鐔全体を一体化させ、左右の櫃穴も紋形の中へ無理なく収めているため、実用に必要な強度を保ちながら、家紋の明快な輪郭と透かしならではの軽快さを両立させた構成です。
地金は温かな赤味を帯びた素銅で、広い平地には長い年月を経た穏やかな古色が広がり、透かしの切り口では地金の明るさがのぞいて、正面の落ち着いた色調との間に自然な明暗を生んでいます。厚みは5.1ミリを確保し、外輪も十分な量感を備えるため、薄く軽い装飾品では得られない確かな手取りがあり、斜めから見込むと透かし際の厚みと紋形が耳へつながる構造がいっそう鮮明に現れます。
武家の標識として一目で見分けられる家紋の明快さをそのまま鐔の造形へ取り込み、左右対称を基調とする整理された透かしと、柔らかな色調を持つ素銅の広い地を巧みに組み合わせています。丸耳の内側へ展開する直線、斜線、円弧の対照が心地よい緊張感を生み、伝統的な家紋意匠を大胆で端正な造形へ昇華したところに、本品ならではの個性が表れています。
少し離れて眺めれば丸に重ね釘抜紋が力強い一つの標章として浮かび、手元へ寄せれば二枚の方形が交差する仕掛け、素銅の微妙な色むら、透かし際の仕事、実際に拵へ用いられてきた痕跡を順に味わえます。色金象嵌や高彫へ頼らず、素材、形、余白だけで家紋の強い存在感を引き出した一枚であり、黒蝋色や石目地の鞘へ合わせれば素銅の赤味が上品な差し色となるため、家紋透、幾何学文、個性ある色金鐔を好まれる方におすすめしたい、実装にも鑑賞にも映える鐔です。