桃形枝葉透鐔 無銘 -Mumei- 12-1826
通常価格:¥110,000
税込
桃形枝葉透鐔
無銘
-Mumei-
縦81.4ミリ 横80.3ミリ 切羽台厚4.4ミリ
重さ110グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 桐箱
本品は外形が単に桃形であるだけではなく、鐔全体をふっくらと実った一つの桃に見立て、その下方へ桃の枝葉を大胆に透かした洒落味豊かな一枚です。長寿、延命、除災を願う瑞果として尊ばれた桃を、実と枝葉に分けて描くのではなく鐔の輪郭と透かしへ一体化させ、上半分には果実らしい豊かな量感を残し、下方では左右へ開く葉と枝によって軽快な余白を作るため、遠目には端正な桃の実、近くでは枝葉まで読み解ける二重の趣向を楽しめます。
鉄地は広い面を穏やかに整えつつ、葉先や葉脈、枝の屈曲を透かしの輪郭だけで簡潔に示し、切羽台を包み込むように枝葉を連ねることで、実用上の強さを損なわず意匠を成立させています。耳には銀覆輪を掛け、その表面へ綱を撚ったような文様を巡らせており、これは鉄地へ刻みを入れたものではなく、深い黒褐色の鉄と時代を帯びた銀の柔らかな光を対照させた丁寧な仕立てで、斜めから眺めると覆輪の起伏と透かし際の厚みがよく現れます。
大きさと重量に十分な量感がありながら、細部を過剰に彫り込まず、外形、地鉄、透かし、覆輪という限られた要素で画題を明快に伝える構成には、江戸前期の気風をなお残す作域がうかがわれます。一方で輪郭と透かしの整理には中期へ通じる端正さも認められることから、制作年代は江戸前期から中期頃と考えられます。
装着した際には、刀身を中心に桃の輪郭が柔らかく広がり、下方の透かしから鞘や背景の色がのぞくことで枝葉が鮮やかに浮かび、綱文の銀覆輪が拵全体を上品に引き締めます。吉祥性の明快な画題、大振りで堂々とした姿、古雅な鉄味、装飾性と実用性を兼ねた銀覆輪が揃い、桃を主題とした刀装具や植物文様を集める方だけでなく、個性ある時代拵の中心金具を求める方にもおすすめできる、鑑賞性の高い一枚です。