四方葵葉透鐔 無銘 -Mumei- 12-1825
通常価格:¥99,000
税込
四方葵葉透鐔
無銘
-Mumei-
縦80.2ミリ 横79.2ミリ 切羽台厚4.5ミリ
重さ89グラム
江戸前期 The early period of Edo era
附属 桐箱
切羽台を囲む斜め四方に葵葉を配して鉄地を大きく透かした一枚で、葉の丸みと茎の直線を均衡よく巡らせ、外周まで文様そのものが連なって形を成すため、白い背景では葵葉の輪郭が明快に浮かび、暗い鞘に合わせれば透かした部分が奥行きある陰影に変わるなど、簡潔な意匠ながら見る場面によって表情を変える鐔です。
葵葉は左上、右上、左下、右下に一枚ずつ置かれ、それぞれふくらみを帯びた葉先を内へ返し、葉の間を走る細い鉄線が切羽台と耳を結ぶことで、斜め四方へ視線を導きながら全体を一つの意匠に引き締めています。外周は小さな弧を重ねた花形に近い輪郭を見せ、直線と曲線、大きな透かしと厚く残した鉄とが交互に現れるため、正面からは軽快なリズムがあり、手に取って傾ければ葉先や透かし際に生まれる厚みも楽しめます。
縦80.2ミリ、横79.2ミリと十分な大きさを持ちながら、広く地を抜いた造りによって重さは89グラムに収まり、切羽台には装着の跡が残って、飾るためだけではなく実際に佩刀へ掛けられてきた趣がうかがえます。小柄櫃穴には山銅または四分一と思われる薄板が丁寧に嵌められ、裏面左上の葵葉と耳の一部には赤銅による象嵌が見られ、その赤銅象嵌の中には小さな四角い金象嵌も一箇所施されており、目を凝らすほどに細やかな仕事が見えてきます。鉄地には落ち着いた黒褐色の錆色と細かな起伏が見られ、耳の側面にはまるで鋳型の合わせ目を思わせるほど明瞭な鉄骨が現れており、硬度の異なる鉄板を合わせて鍛えたものと思われる独特の鉄味と控えめな色金の妙が、透かしの造形を主役に据えた本品の魅力を深めています。
葵は葉が伸びて繁る姿から繁栄を連想させ、武家の紋章にも親しまれた題材で、本品はその親しみやすい文様を斜め四方へ展開させながら、花形の輪郭と大透の余白によって端正な一枚にまとめています。無銘のため作者や流派を断定することはできませんが、太く残した耳と鉄線、大胆な地透、使い込まれた鉄の風合いを総合すると江戸前期頃の作と見るのがふさわしく、大きさに不足のない姿と表裏を通して楽しめる透かしの明快さが相俟って、古鐔を手元で鑑賞するにも、葵を主題とした拵へ取り合わせるにも魅力ある品です。