雪持竹透鐔 無銘 -Mumei- 12-1823
通常価格:¥66,000
税込
雪持竹透鐔
無銘
-Mumei-
縦82.7ミリ 横83.0ミリ 切羽台厚4.8ミリ
重さ100グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
雪持竹は、降り積もる雪の重みに耐えてしなやかに身を撓めながら、折れることなく青さを保つ竹の姿を表した画題です。冬の厳しさに屈しない生命力から、忍耐、節操、長寿、逆境を越える強さを象徴し、常緑の竹が備える清廉な趣と相俟って、武家の装具にも相応しい吉祥意匠として好まれてきました。本品はその姿を鉄地の大透によって力強く表し、色金の華やかさに頼らず、竹の直線、葉の鋭い輪郭、雪の柔らかな曲線と透かした空間のみで、冬景色の張り詰めた空気まで感じさせます。
丸形の鐔面には、太い竹の幹を天地へ通し、その左右から伸びる枝葉を大きく展開させ、片側には雪が厚く積もって枝を押し下げる姿を配しています。上方へ鋭く伸びる葉、重みを受けて斜めへ撓む枝、輪郭を丸く崩した雪の形を一続きの鉄で繋ぐ構成は、静かな冬の一場面でありながら強い動勢を備え、切羽台を中心として左右の量感に変化をつけることで、整い過ぎない自然な均衡を生み出しています。両櫃孔も竹の幹や枝の間へ巧みに取り込まれ、実用上必要な開口部を画面の余白として生かしているため、正面から見た際には一枚の図案として違和感なくまとまっています。
耳は丸く十分な肉を保ち、竹の幹から葉先へ至る鉄線も要所を太く残しているため、大きく地を透かしながら鐔としての堅牢さを失わず、手に取れば100グラムの確かな量感と鉄の頼もしさが伝わります。表面には長い年月を経て育った黒褐色の錆色と細かな起伏が広がり、平滑に磨き上げた地とは異なる野趣を帯びた鉄味が、雪中に立つ竹の逞しさを一層引き立てています。透かしの切り口や葉の重なりは角度を変えるほど奥行きを増し、正面では大胆な意匠、斜めからは地金の厚みと立体的な枝葉を楽しめる仕立てです。
雪持竹透鐔には古赤坂をはじめとする名高い作例が知られ、本品も古式の大透意匠を受け継いでいますが、太い丸耳、整えられた切羽台、地透の構成と鉄の仕上がりを総合すると、江戸中期頃の作と見るのが妥当でしょう。無銘のため特定の流派へは極められないものの、大振りな鐔面を余すところなく使った大胆な構図、武用鐔らしい強固な造り、逆境に耐える竹という縁起の良い主題が一体となっており、古鐔として飾った際の存在感はもちろん、力強い透鐔を主役にした拵を構想される方にもおすすめしたい、鑑賞性と武家らしい気概を兼ね備えた一枚です。