瓢箪図小柄 無銘 -Mumei- 16-242
通常価格:¥143,000
税込
瓢箪図小柄
無銘
-Mumei-
全長97.8ミリ 幅14.2ミリ 重さ27.5グラム
江戸前期後半~中期 The latter part of the early to middle Edo period
附属 桐箱
瓢箪は細い蔓を旺盛に伸ばし、次々と実を結ぶことから、子孫繁栄、豊穣、家運隆盛を象徴する吉祥意匠として古くから親しまれてきました。くびれを備えた柔らかな姿には素朴な愛嬌があり、実用の器や酒器として人々の暮らしに深く結び付いてきた一方、蔓が途切れず延びる様子には縁が長く続くことへの願いも重ねられ、武家の装いを彩る刀装具にも相応しい、親しみやすさと祝意を兼ね備えた画題です。
本品は温かな黄金味を帯びた宣徳地を広く生かし、その上へ一本の蔓を縦長に這わせ、葉と瓢箪の実を高彫で立体的に表しています。意匠を全面へ均等に散らすのではなく、戸口側に蔓葉を集めながら戸尻側には静かな余白を残し、密と疎を巧みに対照させた構成で、細長い小柄の形を生かして植物が自然に伸びてゆく勢いを感じさせます。曲折する蔓から巻鬚が幾重にも弧を描き、その途中で葉の向きや実の大きさを変えることにより、限られた画面の中へ単調さのない軽快なリズムと奥行きを作り上げています。
葉には赤銅と素銅を使い分け、黒と赤褐色の色調によって表裏や重なりを見せながら、葉脈を一本ずつ彫り込んで小さな葉にもふっくらとした量感を与えています。葉のうち二枚と瓢箪の実には金色絵が施されていますが、長い年月の中で自然に擦れて落ち着いた地色が現れ、その穏やかな摩耗が作為では得難い良好な時代の雰囲気を生み出しています。細く延びる蔓と巻鬚には銀を用いて宣徳地から涼やかに浮かび上がらせており、黒い赤銅、赤味を帯びた素銅、時代を経た金色絵、銀という多彩な色金が落ち着いた地色の上で過不足なく響き合い、角度を変えれば肉高く彫られた葉や実の陰影と銀の蔓が細い光を拾って、写真だけでは伝わりきらない立体感を楽しませます。
裏面は文様を置かない宣徳磨地に仕立て、表面の豊かな色彩と彫りの密度を引き立てる簡潔な構成で、表裏に残る擦れや斑状の古色、金色絵の自然な摩耗を併せて見ると、制作年代は江戸前期後半から中期までの幅で捉えるのが相応しいでしょう。無銘ながら、蔓を自在に巡らせる構成力、葉と実を立体的に表す高彫、複数の色金を細やかに使い分ける手数には確かな見どころがあり、華美に偏らない宣徳地の渋さと吉祥画題の明るさを一口で味わえる、飾り映えと鑑賞性を兼ね備えた魅力豊かな小柄です。