龍虎図小柄 無銘 -Mumei- 16-240
通常価格:¥44,000
税込
龍虎図小柄
無銘
-Mumei-
全長96.7ミリ 幅14.05ミリ 重さ20.3グラム
江戸後期~明治時代 The late Edo to Meiji period
附属 桐箱
龍虎は天を翔ける龍と地を駆ける虎を対置し、天地に並び立つ二つの力を象徴する勇壮な画題で、「龍吟虎嘯」の語にも通じます。龍が雲を呼び、虎が風を起こすという壮大な世界観は古くから絵画や武具へ採り上げられ、互いの力を引き立て合う好一対の意匠として親しまれてきました。
本品は山銅あるいは素銅とみられる銅地へ黒い魚子状の画面を設け、左に虎、右に龍を配し、細長い小柄の中央で互いに睨み合う姿を表しています。虎は前脚を踏み出して身体を低く構え、鋭く顔を上げて龍を見据える一方、龍も大きく口を開き、長い身体をうねらせながら虎へ迫っており、左右から中央へ集まる双方の視線と動勢によって、風雲が巻き起こる直前のような緊張感を作り上げています。
虎の背後には節を備えた竹を、龍の背後には花をつけた梅の枝を配し、直線的な竹と曲折する梅枝によって左右の景色にも明快な変化を与えています。竹の幹や葉、梅の花を金色絵で鮮やかに浮かび上がらせるとともに、龍の長く伸びる髭や角、身体の一部にも金を施しており、暗色を基調とする地金の上で金色が視線を導きながら、龍虎の対峙を一層劇的に見せています。龍の鱗や鬣、虎の縞と量感も細かく表され、正面では二頭が向き合う全体構成を、斜めからは地から浮かび上がる姿と型打出しによる柔らかな膨らみを楽しめ、裏面は文様を置かない銅地に仕立てることで表の意匠を際立たせています。
龍虎や竹梅は、山銅または素銅系の薄い銅板を型へ当てて打ち出し、必要な箇所へ鏨を加えて細部を整えた型打出しの仕事とみられます。地金を深く彫り下げて一つひとつ形を起こす本格的な高彫とは技法も評価も異なりますが、薄い地金から虎の躯体、龍の長い身体、竹と梅を破綻なく起こし、そこへ金色絵を重ねて画面全体へ明暗と華やかさを与えたところには、型打出しならではの軽快な立体感と装飾効果があります。重量が20.3グラムに収まる点も、厚い鋳造品ではなく薄板を成形した造りとよく符合します。
小柄全体の仕立て、裏板に残る古色、縁や戸口に見られる摩耗を併せて考えると、幕末から明治時代にかけて制作された作とみるのが自然であり、型打出しのため上手な町彫小柄と同列には置けないものの、江戸後期を含む時代性、向き合う龍虎を竹と梅で囲んだ密度ある構成、暗色の銅地と金色絵の明快な対照には十分な鑑賞性があり、天を象徴する龍と地を代表する虎が互いの力を競う勇壮な世界を一口へ凝縮した、親しみやすく見栄えのする小柄です。