梶原景季箙の梅図小柄 無銘 -Mumei- 16-239
通常価格:¥33,000
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梶原景季箙の梅図小柄
無銘
-Mumei-
全長97.0ミリ 幅14.4ミリ 重さ26.2グラム
江戸後期 The latter Edo period
附属 桐箱
「箙の梅」は、源氏方の若武者、梶原源太景季の風雅と武勇を伝える著名な故事です。一ノ谷合戦における生田の森の戦いで、景季は咲き匂う梅の枝を折り、矢を収める箙へ挿して戦ったと伝えられています。激しい戦場にありながら花を愛でる心を失わなかったその姿は、武勇と優雅さを兼ね備えた武者の理想として称賛され、のちに能《箙》をはじめ、絵画や刀装具にも繰り返し表される画題となりました。
本品は温かみのある素銅地へ魚子を打ち、その下方に甲冑姿の梶原景季を高彫で表し、背負った箙から梅の枝が上方へ伸びる姿を細長い小柄の形へ巧みに収めています。人物を画面の下半へ寄せて上方に広い余白を残し、その中へ梅の枝をすらりと立ち上げる構成によって、武者の重厚な立姿と春を告げる花の軽やかさが鮮やかに対照をなし、限られた空間の中に物語の核心を一目で伝えています。
兜、袖、胴、佩楯、脛当などはそれぞれの重なりを肉高く彫り分け、顔や手足、甲冑の各所に金色絵を効かせています。細かな甲冑の線と人物の量感を毛彫や点彫で引き締め、梅花にもわずかな金色を添えることで、黒い魚子地の上に武者と花が奥行きをもって浮かび上がり、角度を変えると高彫の陰影や色金の落ち着いた光沢が次々と現れます。
勇壮な甲冑武者を表しながら、画面の主眼を戦闘そのものではなく箙に挿した一枝の梅へ置いたところに、本画題ならではの魅力があります。武功のみならず美意識や教養を重んじた武者の精神性を伝え、梅花の清香と戦場の緊張を一つの画面へ凝縮した意匠は、単なる武者図とは異なる文学性と余韻を備えています。赤褐色の地、緻密な黒い魚子、素銅と金色絵の古雅な色彩がよく調和し、梶原景季の武勇と風雅を手元で味わえる、物語性と鑑賞性に富んだ小柄です。