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帆立貝図小柄 無銘 -Mumei- 16-236

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帆立貝図小柄
無銘
-Mumei-

全長96.9ミリ 幅14.7ミリ 重さ27.8グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱


帆立貝は、蝶番から外縁へ向かって放射状に広がる稜線と、扇を思わせる端正な姿を備えた、金工の立体表現によく映える画題です。海の恵みを身近に伝える貝であるとともに、波打ち際で拾い集めた貝殻を愛でるような風雅な趣があり、その末広がりの形には吉祥の印象も重なって、武具意匠の中へ穏やかな海辺の情景と涼やかな気配をもたらします。

本品は黒々とした赤銅魚子地へ五枚の帆立貝を彫り表し、金色絵と銀色絵を取り合わせながら、大小、向き、重なり方を一枚ごとに変えています。左では大きな銀色の貝へ小さな金色の貝を寄り添わせ、中央では表向きと裏向きの二枚を重ねて量感ある見せ場を作り、右には一枚を独立して置くことで、貝殻が波に運ばれて浜辺へ自然に散らばったような景色を細長い画面の中に生み出し、広く取った余白がそれぞれの形と色をいっそう鮮明に引き立てています。

とりわけ巧みなのが貝の表裏を造形そのものによって描き分けた点で、表向きの貝は中央をふっくらと盛り上げ、そこから外縁へ放射状の稜を一筋ずつ刻むことで硬質な殻の厚みを表す一方、裏向きの貝は中央を反対に窪ませ、殻の内側に生じる深みを的確に捉えています。単に同じ形を反復するのではなく、凸と凹を対照させて重なりに実在感と豊かな陰影を与えており、角度を変えるたび起伏へ光が走り、金の温かな輝きと銀の涼やかな光が赤銅の深い黒の上で交互に浮かび上がります。均整の取れた魚子は静かな海面を思わせる細かな光をたたえ、表裏を彫り分けた貝の立体感と鮮やかな色彩を受け止めながら、画面全体に格調ある奥行きと小さな波のような心地よいリズムを与えています。

裏面は黒色の磨地を広く簡潔に仕立て、表面に凝縮された魚子、高彫、金銀色絵の華やかさを際立たせる静かな余韻を残しています。離れて眺めれば五枚の貝が作る軽やかな配置と金銀の対照が目を引き、手元では殻の稜線、大小の変化、重なりによる陰影、細密な魚子をじっくりと味わえるため、海浜の風情を好まれる方はもちろん、色金の美しさと精緻な彫金を一口で楽しみたい方にもおすすめできる、上品さと愛らしさを兼ね備えた魅力豊かな小柄です。
寸法全長96.9ミリ 幅14.7ミリ
時代江戸中期 The middle Edo period
鑑定書―
付属桐箱
重量重さ27.8グラム

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