矢の根図小柄 無銘 -Mumei- 16-235
通常価格:¥154,000
税込
矢の根図小柄
無銘
-Mumei-
全長96.4ミリ 幅14.8ミリ 重さ24.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
矢の根は獲物や用途に応じてさまざまな形が生み出され、その鋭利な輪郭と機能に即した造形は武具として用いられる一方、狙いを定めて真っ直ぐに進む矢の姿に志を貫く決意や邪気を射払う守護の力が重ねられ、金工意匠の好題にもなりました。本図は形の異なる三つの矢の根を細長い画面へ集め、武家らしい緊張感と色金による華やかさを両立させた、刀装具ならではの趣向です。
本品は深く澄んだ黒色を呈する赤銅魚子地を背景とし、左に桜花形の透かしを設けて金色絵を施した幅広い平根、中央に左右の翼を鋭く反らせた赤銅の雁股、右に大きな透かしを設けて銀色絵を施した平根を肉高く据え、三つを同じ方向へ単調に並べず左右から中央へ向けて交差するように配すことで、輪郭、色彩、向きの変化が響き合う、緊張感と均衡に富んだ画面を作り上げています。
各々の矢の根は、箆へ差し込むために細長く伸びた鏃の茎まで細部を疎かにせず造り込まれ、平根の広い面、雁股の鋭い曲線、透かしが生む奥行きという異なる造形を一度に味わえるうえ、地を埋める粒の細かな魚子が据紋の輪郭をくっきりと引き立て、角度を変えるたび金色絵の温かな輝き、赤銅の落ち着いた黒、銀色絵の冷ややかな光が順に現れます。
裏面は黒色の磨地を広く端正に仕立て、表面の精緻な魚子と立体的な据紋を際立たせる静かな余韻を残しています。用途と姿の異なる矢の根を一つの標本のように鑑賞できる趣向性に、武具としての機能美と江戸金工の繊細な装飾性が凝縮され、離れては凛々しく華やかな構成を、手元では彫りと透かしと色金の細やかな変化を楽しめる、格調高く見応えのある一口です。