小桜文絲威揺札胴丸(大袖付) -Kozakura-mon Ito-odoshi Yurugi-zane Domaru (O-sode-tsuki)- 7-108
通常価格:¥1,650,000
税込
小桜文絲威揺札胴丸(大袖付)
-Kozakura-mon Ito-odoshi Yurugi-zane Domaru (O-sode-tsuki)-
江戸中期~後期 The middle to latter Edo period
附属 両大袖
胴丸は、胴を身体へ巻き付けるように仕立て、右脇で引き合わせる古式の甲冑形式。徒歩で戦う武士のための軽快な防具として発達し、のちには上級武士にも用いられました。身体の動きに沿う柔軟な構造と、小札、威毛、金具廻が作り出す端正な美しさを併せ持ちます。
本作は江戸中期から後期に制作されたとみられる、両大袖を備えた胴丸です。胴と大袖には練革製の本大札を用い、一枚一枚を綴じ合わせて幾段にも重ねる本格的な仕立て。札板を漆で一枚の板状に固め切らず、各札が動くように綴じた「揺札」とすることで、着用者の動きに応じて柔軟に屈伸する構造となっています。
威には小桜文様を表した絲を隙間なく通す毛引威を採用。濃い地色に小桜の白が細やかに連なり、重厚な札へ華やかな律動を与えています。左右へ大きく張り出す両大袖も胴と同じ小桜文絲で整えられ、裾には赤みを帯びた威絲を配して画面全体を引き締める構成。正面の端正な姿はもちろん、側面では札の重なりが生む深い陰影と、大袖の堂々たる量感を堪能できます。
草摺は胴や大袖とは異なり、練革製の本小札を一枚ずつ細やかに綴じ合わせた、手間を惜しまない仕立て。本小札は札数が多く、その成形から穿孔、綴じ合わせ、威に至るまで多大な工程を要するため、本作の価値を支える重要な見どころとなっています。左右へ大きく開く姿は一見すると大鎧を思わせますが、構成は五間草摺であり、右脇引合せの胴丸に属します。裾へ向かって緩やかに広がる五間の草摺と両大袖が呼応し、古式甲冑らしい重厚な輪郭を形成。大鎧の風格を採り入れながら、胴丸ならではの機動性を備えたところに、この一領ならではの面白さがあります。
背面には大鎧と同形の逆板を設けています。逆板は通常の札板とは重なりを逆にして背中の動きへ追随させる構造で、古式甲冑に倣った丁寧な造りを示す見どころ。さらに、指物の受筒を取り付けるための合当理が備わり、外観の華やかさだけでなく、武具としての機能を意識して仕立てられたことが窺えます。
現状でも鎧立へ掛けて十分に見応えがあり、両大袖を備えた姿は展示空間でひときわ強い存在感を放ちます。着用も可能ですが、実際に用いる際には引合緒など一部へ補修を施すことをおすすめします。江戸期の練革製本大札、練革製本小札による五間草摺、柔軟に動く揺札、小桜文絲の精緻な毛引威に、逆板と指物受けの機構まで備えた、古式の趣と堂々たる造形を味わえる一領です。
※写真の鎧櫃は撮影用のため附属しません。