几帳女人図小柄 無銘 -Mumei- 16-209
通常価格:¥165,000
税込
几帳女人図小柄
無銘
-Mumei-
全長95.1ミリ 幅14.3ミリ 重さ31.9グラム
江戸中期~後期 The middle to late Edo period
附属 桐箱
几帳は平安王朝の御殿や貴族の邸宅で室内を隔てるために用いられた雅やかな調度で、その傍らに坐す女人と文箱を組み合わせた図には、和歌や消息によって思いを交わした王朝文化の情趣が込められています。帳の内に秘められた物語を、女性の姿や開かれた文箱から想像させるところにこの画題ならではの魅力があり、物語絵巻の一場面を掌中へ凝縮したような優美さを味わわせます。
本品は深い黒紫色を呈する赤銅魚子地の中央へ女人を据え、その左側には蓋を開いた文箱、右側には大きく広げた几帳を配することで、長い小柄の画面へ王朝の静かな一室を均衡よく描き出しています。女人の伏せた顔や重なり合う衣の襞を肉彫によって柔らかく立ち上げ、着物には桐紋を散らし、几帳には桐紋と菊紋を華やかに表しており、人物、調度、文箱の一つ一つに精緻な鏨が行き届いています。
女人を画面の中央に置き、左右へ文箱と几帳を対置した構成は、開かれた文箱へ視線を導きながら、几帳の向こう側にまで物語が続いていくような奥行きを生み、金色に輝く桐紋と菊紋が赤銅魚子地の深い黒を背景に鮮やかに浮かび上がります。几帳の柱や横木、垂れ布、結び紐に至るまで細部を疎かにせず、豪華な金の装飾の中にも女性の静かな佇まいを失わない、華やかさと品格を兼ね備えた仕上がりです。
小柄の胴全体には金の薄板を着せ、その上へ赤銅魚子地の表板を合わせた贅沢な造りとなっており、外周を巡る金色の縁と明るく輝く裏面が一体となって、手に取ったときにも格別の存在感を示します。正面では赤銅の黒と金の鮮やかな対照、裏返せば一面を包む金の薄板の明朗な輝きが現れ、表裏で大きく趣を変えるところも見どころであり、王朝風俗の雅、緻密な魚子、精巧な高彫色絵、惜しみなく用いられた金の薄板を一作に備えた、鑑賞の中心となる華麗で格調高い小柄です。