菊薄束ね図小柄 無銘 -Mumei- 16-206
通常価格:¥176,000
税込
菊薄束ね図小柄
無銘
-Mumei-
全長98.2ミリ 幅14.7ミリ 重さ32.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
菊は長寿、高潔、厄除けを象徴する格調高い吉祥花であり、薄は秋風に穂をなびかせる姿から、移ろう季節の風情を伝える秋草として古くから和歌や絵画、工芸に親しまれてきました。菊と薄を一つに束ねた意匠は、菊の祝意と秋野の涼やかな情趣を同時に味わわせ、野に咲く草花を手元へ取り集めたような親しみと、武家の装具に相応しい端正な美しさを備えています。
本品は漆黒の赤銅地へ微細な魚子を隙間なく打ち、二輪の菊花を中心として、葉と薄を思わせる細長い秋草を上下へ伸びやかに配し、その根元を折形と紐で束ねた姿を高彫色絵で表しています。正面を向く二輪の菊は花弁を一枚ずつ丁寧に起こし、その周囲へ葉の向きや重なりを変えながら秋草を添えることで、細長い小柄の画面に自然な高低差と、上へ立ち昇るような美しい流れを生み出しています。
葉の上には露の雫を重ねるように銀象嵌を点じ、黒い赤銅と銀の静かな対照によって、朝露をまとった秋草の瑞々しさを印象深く表しています。花弁、葉、薄の要所には金や銀の色を控えめに利かせ、根元の折形と結び紐まで細やかに作り込むことで、豊かな彩りを備えながらも全体を品よくまとめています。余白を十分に残して束ねた草花の輪郭を明快に浮かび上がらせる構成、細密で均整の取れた魚子、色金を華美に見せすぎない落ち着いた表現には江戸中期らしい端正な美意識が感じられ、正面では凛とした秋草の姿、斜光では花弁や葉が幾層にも重なる高彫の立体感、銀の露が静かにきらめく繊細な景色を味わえる、季節感と吉祥性を兼ね備えた魅力豊かな一作です。