菊摘み園丁図小柄 無銘 -Mumei- 16-204
通常価格:¥154,000
税込
菊摘み園丁図小柄
無銘
-Mumei-
全長97.9ミリ 幅14.1ミリ 重さ26.3グラム
江戸前期 The early Edo period
附属 桐箱
菊は、厳しい秋に香り高く咲き続ける姿から長寿、高潔、邪気を退ける力を象徴し、武家の調度から衣装、刀装具まで広く愛された吉祥の花です。本図では花そのものだけでなく、菊を摘み集める園丁の働きへ視線を向け、季節の実りと人の営みを一つの画面へ収めることで、親しみやすさの中に雅趣を備えた風俗画題となっています。
本品は小柄本体から据紋まで全体を赤銅製とし、深い黒色を呈する地へ端正な魚子を打ち、画面右寄りに笠を被って腰を下ろす園丁を高彫色絵で表しています。手元には熊手、傍らには鎌を配し、背後の籠には摘み取った菊花をのぞかせており、衣の重なり、籠の編み目、農具の細部まで、限られた小柄の画面に密度高く彫り込んでいます。
人物の衣や農具の要所には金色絵を過不足なく用い、漆黒の赤銅魚子地へ柔らかな光を置くことで、野に働く人物の温もりと菊の気品を引き立てています。人物を右へ寄せ、左側へ広い余白を残した構成も巧みで、遠目には静かな黒の美しさ、手元では園丁の所作と道具の一つ一つを楽しめます。金色絵が地へ穏やかに馴染んだ古色、均整の取れた細かな魚子、同色の据紋を主体として金を要所だけに利かせる抑制ある色使いには、江戸前期の古様な金工美が表れており、秋の風情と長寿の願いをさりげなく拵へ添える一作です。