赤銅地海鼠透鐔 無銘 -Mumei- 12-1806
通常価格:¥242,000
税込
赤銅地海鼠透鐔
無銘
-Mumei-
縦70.5ミリ 横67.5ミリ 切羽台厚5.85ミリ 重量127.0グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 桐箱
海鼠透は、丸みを帯びた長い透かしを大きく開き、その伸びやかな曲線と地板の力強い輪郭によって簡潔な美を作り上げる意匠で、具体的な画題を描かずとも一目で印象に残る造形として親しまれてきました。装飾を重ねないからこそ、透かしの幅、曲線の張り、左右の均衡、地金の色艶がそのまま作品の格となり、わずかな線の違いが全体の表情を左右する、簡素さの中に高度な造形感覚を求められる意匠です。
本品は深い紫黒色を呈する赤銅無垢を竪丸形に仕立て、左右へ弧を描く二つの大きな海鼠透を開き、中央の広い切羽台と外周を太く結ぶことで、静けさの中にも張りのある堂々とした構成を作り上げています。厚さ5.85ミリ、重量127.0グラムという充実した地金を惜しみなく用いながら、広い透かしによって軽快な抜けを生み、量感と開放感という相反する魅力を一枚の中で見事に調和させています。
耳には金の薄板による覆輪を全面に巡らせ、さらに両櫃孔にも同じく金薄板の覆輪を施し、赤銅の深い紫黒色を金の細い光で二重に引き締めています。耳の金覆輪には繊細な筋目が走り、正面では外周を縁取る端正な輝きとして、斜めからは肉厚な地を包む豊かな金の帯として現れ、両櫃孔の金覆輪と呼応しながら簡潔な画面へ格調ある華やぎを添えています。
茎孔は上部を小さく括りながら下方へ広がる古様な輪郭を留め、上下に入れられた素銅の責金とともに、異なる刀茎へ合わせながら長く大切に用いられてきた来歴を伝えています。この茎孔の姿に、赤銅無垢の厚い地板、大胆で簡潔な海鼠透、広く力強い切羽台、赤銅と金だけに色彩を絞った古典的な構成を併せて見ると、制作年代は江戸中期に限るより江戸前期から中期にかけてと鑑するのが相応しく、古作らしい骨格の強さと時代の洗練を同時に備えています。
正面では大きな透かしと金の輪郭が明快な意匠美を見せ、手に取れば赤銅無垢ならではの確かな重みと耳を包む金覆輪の贅沢な仕立てを味わえ、表裏を返し斜めから眺めるたびに、厚い地板、伸びやかな透かし、金覆輪の細やかな筋目が異なる表情を現します。図柄に頼らず、素材、造形、色彩の調和だけで鑑賞を深められる、古格と品位、確かな存在感を兼ね備えた魅力豊かな一枚です。