赤銅魚子地鐔 無銘 -Mumei- 12-1805
通常価格:¥242,000
税込
赤銅魚子地鐔
無銘
-Mumei-
縦64.25ミリ 横58.45ミリ 切羽台厚4.8ミリ 重量97.1グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
魚子地は、先端を丸く整えた鏨を一打ずつ正確に打ち込み、魚卵を連ねたような微細な粒を地一面へ揃える高度な金工技法で、粒の大きさ、間隔、深さを乱さず広い面へ打ち続けるには卓越した集中力と熟練を要します。ことに銅へ少量の金を加えた赤銅は、煮色によって深い紫黒色を呈する格調高い色金であり、その赤銅無垢の地へ整然とした魚子を施した作は、素材の品格と鏨仕事の精度を最も純粋な形で味わわせる、江戸金工の端正な美意識を象徴するものです。
本品は引き締まった竪丸形を赤銅無垢で仕立て、表裏のみならず厚みのある耳に至るまで、微細な魚子を丹念に打ち詰めています。中央の切羽台だけを平滑に残すことで、緻密な粒が連なる地文と艶やかな磨地との対比を際立たせ、両櫃孔には金の薄板による覆輪を施して、深い紫黒色の地へ端正な光の輪郭を添えています。図柄を加えず、赤銅の色、魚子の精度、金覆輪の細い輝きだけで格を見せる構成には、技巧を誇示せず品位へ昇華させた工人の確かな力量が表れています。
一粒ずつ手で打たれた魚子は、正面では静かな紫黒色の面として落ち着き、斜光のもとでは無数の粒が柔らかく光を受けて、絹地にも似た端正な表情を浮かべます。耳まで仕事を途切れさせず仕上げた周到さに加え、両櫃孔を包む金の細線が全体を引き締め、赤銅と金という伝統的な色金の対照を過不足なく引き出しています。規則正しい手打ち魚子、広く取られた切羽台、均整の取れた櫃孔、抑制された金使いには江戸中期の洗練が濃く感じられ、97.1グラムの赤銅無垢がもたらす確かな量感とともに、手に取るたび素材の充実と精緻な鏨技を味わわせます。華やかな画題に頼らず、地金と技術そのものを鑑賞の中心に据えた、静謐さの中に確かな格を備える一枚です。