竹筍蜘蛛蝿図鐔 無銘 -Mumei- 12-1802
通常価格:¥220,000
税込
竹筍蜘蛛蝿図鐔
無銘
-Mumei-
縦78.05ミリ 横77.7ミリ 切羽台厚4.7ミリ 重量151.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
竹は厳しい冬にも青さを保ち、真っ直ぐに伸びながら節を備えることから節操、長寿、不屈を象徴し、地を割って力強く姿を現す筍は成長と子孫繁栄を表します。そこへ竹林に生きる蜘蛛と蝿を取り合わせた本図は、吉祥の植物へ身近な小さな命を重ねることで、竹の生命力だけでなく自然界の営みまで一つの画面へ封じ込めた趣向であり、江戸金工らしい写生への関心と、細部を探しながら味わう洒脱な遊び心を伝えています。
本品は丸形の地を赤銅覆輪で端正に引き締め、小柄櫃孔と笄櫃孔の双方にも赤銅の覆輪を巡らせ、さらに下方へ大きく開いた猪目窓まで赤銅で縁取ることで、外周から各開口部へ深い黒紫色の線が響き合う、統一感豊かな構成を作り上げています。表の上と左右へ赤銅の竹葉を配し、左側には赤銅の筍を立体的に据え、上方には細かな刻みを施した円形の枠を設け、その内側へ宣徳、すなわち真鍮で蜘蛛を表しており、円の規則的な刻みと蜘蛛の精緻な姿が画面上部の印象的な焦点となっています。
下方の猪目窓には折れ竹を思わせる竹の根元を組み込み、その上へ一匹の蝿を休ませ、身体を赤銅、細い足を宣徳で表すことで、わずかな色調の違いから蝿の姿と動きを鮮やかに浮かび上がらせています。大きな猪目の透かしを単なる余白とせず、その内部を一つの小景として仕立てた発想が秀逸であり、上方の蜘蛛と下方の蝿が画面の上下で呼応し、竹と筍の吉祥性へ自然観察の面白さを加えています。
裏面は赤銅の竹葉だけを簡潔に配し、蜘蛛、蝿、筍を盛り込んだ表面とは対照的な静けさを見せながら、表裏を通じて竹林の気配を連続させています。表裏すべての竹葉には丸鏨を打ち込んだ虫喰いの表現が施され、同じ仕事を一枚一枚の葉へ意識的に繰り返すことで、若葉の整った美しさだけではなく、自然の中で時を重ねた竹の姿まで写実的に描き出しており、正面では赤銅の落ち着いた色合いと大胆な構成、手元では覆輪、円刻、虫喰い、蝿の足に至る細密な色金使いが次々と現れる、鑑賞するほど発見と愛着が深まる魅力豊かな一枚です。