波濤雲龍図鐔 江川重信 -Egawa Shigenobu- 12-1797
通常価格:¥660,000
税込
波濤雲龍図鐔
江川重信
-Egawa Shigenobu-
縦92.6ミリ 横88.7ミリ 切羽台厚4.7ミリ 重量213.0グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 特別保存刀装具鑑定書、日本刀装具研究会鑑定書、桐箱
江川重信は江戸後期に活動した装剣金工で、詳しい伝歴にはなお未詳の点を残します。本作では、堂々たる鉄地へ龍と波濤を量感豊かな鋤出高彫で表し、鱗や鬚、波頭へ細密な鏨を重ねながら、眼、角、牙などの要所に金銀の象嵌色絵を添えており、重信の確かな彫技と、大きな主題を一枚の鐔へ破綻なく収める優れた構成力が明瞭に示されています。
龍は水を司り、雲を呼んで天空へ昇る霊獣として、武威、守護、飛躍を象徴する刀装具屈指の吉祥画題であり、荒れ狂う波濤と湧き立つ雲を従えた姿には、逆境を越えて大きく運を開く力強い願意が込められています。黒褐色の鉄地に金銀の光をわずかに効かせた表現は、華美へ傾くことなく龍の眼差しと表情を際立たせ、古色の奥から霊獣が姿を現すような緊張感を生み出しています。
本品は90ミリを超える大振りの竪丸形を舞台として、表面いっぱいに波濤を割って現れる龍を大胆に配し、頭部を高く掲げながら長い胴を大きくうねらせ、四肢と鋭い爪を波間へ踏み込ませることで、限られた円内を越えて迫り出すような雄大な動勢を作り上げています。鱗は一枚ごとに起伏と深浅を変えて彫り分け、鬚とたてがみには流麗な細線、雲と砕ける波には厚みのある彫りを用い、硬い鱗、しなやかな毛、水煙を上げる波という異なる質感を鉄一色の中へ鮮やかに描き分けています。
一匹の龍が荒れ狂う波濤と湧き立つ雲を従えながら、鐔の表から耳を巡って裏へと躍動する構成は雄大で、表裏を一続きの画面として余すところなく使うことで、長大な龍体が小さな鐔の世界を突き抜けて天空へ昇っていくような広がりを感じさせます。裏面では広い余白の中へ雲、波、龍体を抑制して配し、表面の激しい動勢から静かな余韻へとつなげており、手に取って返すたびに龍の動きが連続し、物語の全貌が次第に現れる趣向も見逃せません。大径の地鉄、213グラムの確かな量感、在銘、充実した彫技に加えて特別保存刀装具鑑定書と日本刀装具研究会鑑定書を備えた本品は、近くでは精緻な鏨仕事、離れては画面を圧する龍の威容を堪能できる、収集の中心に据えるにふさわしい格調と迫力を備えた一枚です。