桐樹図鐔 無銘(熊谷派) -Mumei (Kumagai school)- 12-1794
通常価格:¥198,000
税込
桐樹図鐔
無銘(熊谷派)
-Mumei (Kumagai school)-
縦85.35ミリ 横81.4ミリ 切羽台厚4.55ミリ 重量166.0グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
熊谷派は、仙台出身の熊谷義次・義之らを中心として江戸後期に活動した装剣金工の一派で、肥後熊本藩細川家の抱え工となり、江戸四谷に居住したことから、江戸肥後、四谷肥後とも呼ばれています。なかでも熊谷義之は精妙な片切彫を得意とした名工として知られ、後進の育成にも大きな役割を果たしました。
その作風は肥後金工の鉄地を重んじる美意識を基礎としながら、毛彫や片切彫、金銀の布目象嵌などを用いて、江戸金工らしい端正さと装飾性を加えたところに特色があり、本国肥後の古雅で侘びた趣とは異なる、洗練された華やかさを備えています。落ち着いた鉄味と精緻な彫金、控えめに輝く金銀の象嵌が調和する点に、熊谷派ならではの魅力があります。
桐は鳳凰が宿る瑞木として格式、繁栄、家運隆盛を象徴し、本品では大振りの撫角形鉄地いっぱいに太い幹と豊かな葉を巡らせ、表では枝葉が右上から左下へ、裏では左上から下方へ流れるように配することで、一株の桐樹を表裏にわたって眺める雄大な構成を作り上げています。広い切羽台と両櫃孔を樹幹の空間へ巧みに取り込み、画面の外へ枝が伸び続けるような生命感を生んでいます。
葉は鋤出高彫と細い葉脈で量感豊かに起こし、花蕾と葉面へ施した金布目象嵌が深い黒褐色の鉄地から柔らかく浮かび、右下へ流れる蔓草状の金象嵌と地の一部に設けた細かな石目が、滑らかな切羽台や大きな葉との美しい対照を見せます。遠目には堂々たる樹影と古金色の華やぎ、手元では地模様、葉脈、象嵌の繊細な変化が次々に現れ、熊谷派の確かな地金使いと装飾感覚を存分に楽しめる格調高い一枚です。