波濤透鐔 無銘(正阿弥) -Mumei (Shoami)- 12-1789
通常価格:¥198,000
税込
波濤透鐔
無銘(正阿弥)
-Mumei (Shoami)-
縦77.4ミリ 横71.4ミリ 切羽台厚6.2ミリ 重量121.0グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
正阿弥派は室町時代に京都を中心として興り、のちに会津、庄内、秋田、阿波、伊予など各地へ広がり、それぞれの土地の素材と美意識を取り込みながら多彩な鐔を生み出しました。鉄地の鍛えを重んじた力強い地透を基礎としつつ、肉彫、毛彫、布目象嵌、色絵まで幅広い技法を用い、実用的な骨格と装飾性を両立する正阿弥物は、地方色の豊かさと意匠の自由さで古くから愛好されています。
波濤は絶えず姿を変えながら尽きることのない水の力を表し、困難を越えて進む生命力、繁栄、運気の上昇にも通じる吉祥意匠です。色金を用いず、鉄骨の太細と透かしの余白だけで波頭、うねり、飛沫を表す波濤透では、素材の鍛え、輪郭の冴え、波を円内へ連続させる構成力が率直に現れ、正阿弥派が得意とした力強い地透の魅力を存分に味わえます。
本品は厚手の竪丸形鉄地へ四方から巻き上がる波を連続して透かし、下方の大波を起点として左右から上方へうねりを巡らせ、切羽台と耳を太い鉄骨で確実に結びながら、波頭の向きと開口の大小を巧みに変化させています。各波は肉彫によって丸みと高低差を与えられ、内側へ巻き込む渦を細い彫りで表すことで、鉄一色の画面に水の重量と躍動感を生み出しています。
表裏では同じ波が反転しながら連続し、正面では均衡の取れた波の配置、斜めからは厚い鉄地に刻まれた波頭の立体感、明るい背景では大きく開いた透かしを通して激しい水勢の影が現れます。ふくらみを持たせた丸耳が外周を力強く締め、切羽台の静かな面と周囲で躍動する波との対照によって、中心から外へ広がるような迫力ある画面を作り上げています。
肉厚な地鉄、深い黒褐色の古色、量感ある丸耳、太く強靱な鉄骨、簡潔で古様な波の捉え方から制作年代は江戸中期と鑑せられ、正阿弥派の地透が備える武張った風格を率直に伝えています。手に取れば厚手の鉄がもたらす確かな存在感、飾れば光と影によって変化する波の動勢を楽しめるため、色金の華やかさではなく、鍛鉄そのものの美しさと大胆な透かしを求める方に薦めたい力作です。