双鳥海鼠透鐔 無銘 -Mumei- 12-1788
通常価格:¥66,000
税込
双鳥海鼠透鐔
無銘
-Mumei-
縦67.1ミリ 横60.5ミリ 切羽台厚4.2ミリ 重量68.0グラム
江戸前期 The early Edo period
附属 桐箱
二羽の鳥を向かい合わせる双鳥図は、つがいの睦まじさや調和、良縁を思わせる親しみ深い画題であり、本作では鳥そのものの姿と海鼠透の大らかな造形を一つに重ね合わせています。海鼠透は丸みを帯びた大きな開口を特徴とし、その簡潔で伸びやかな輪郭は古来より鐔の意匠として愛好されてきましたが、本品は単に海鼠形を並べるのではなく、二羽が翼を広げて向かい合う姿から自然にその形を生み出しているところに、図案の巧みさと独創的な面白さがあります。
本品は小振りの竪丸形山銅地に二羽の鳥を上下から向かい合わせ、上方の鳥は左へ、下方の鳥は右へ嘴を伸ばし、それぞれの頭部に丸い眼を刻んでいます。鳥の胴を切羽台に沿わせ、左右へ大きく広げた翼を耳へつなぐことで、二羽の姿を保ちながら四つの開口が連続する海鼠状の透かしを形作り、限られた円内へ画題と構造を無理なく収めています。
黒味を帯びた山銅の地には歳月を経た落ち着いた古色が育ち、鉄地とは異なる柔らかな光沢と温かみが、丸みある鳥の輪郭を穏やかに浮かび上がらせています。細部を過度に彫り込まず、嘴、眼、頭、翼を必要最小限の線で示した古拙な表現には、写実を離れて意匠の本質だけを捉えた力があり、広い透かしを支える太い骨格と滑らかな耳の連なりも、正面だけでなく斜めから眺めた際に豊かな量感を伝えます。
山銅地の深い古色、素朴で大らかな鳥の造形、太く簡潔な透かしの骨格、図と余白を一体として見せる古様な構成から、制作年代は江戸前期と鑑せられます。上下で呼応する双鳥は見る者の視線を円内へ巡らせ、その翼が作る海鼠透は明るい背景のもとで一層鮮やかに浮かび上がるため、手元では山銅の温かな肌合いを、展示では簡潔で力強い影の美しさを味わえます。小振りながら意匠の完成度と古格を備え、双鳥に託された吉祥性と古透の造形美をともに楽しめる、収集の中でも印象深い一枚です。