梅に垣図透鐔 無銘 -Mumei- 12-1787
通常価格:¥55,000
税込
梅に垣図透鐔
無銘
-Mumei-
縦80.2ミリ 横71.6ミリ 切羽台厚5.4ミリ 重量98.0グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 桐箱
梅は寒中にいち早く花を開くことから忍耐、高潔、吉祥を象徴し、垣を越えて枝を伸ばす姿には、整然とした人の営みの中へ春の生命が入り込むような風情があります。直線的な垣と自在に曲がる梅枝を取り合わせた意匠は、規則と自然、静けさと芽吹きの力を対照させながら、限られた円内に早春の庭景を明快に表す画題として親しまれました。
本品は大振りの竪丸形鉄地へ縦横の垣を地透で組み、その格子を縫うように梅の幹と枝を巡らせ、左右と下方へ花や蕾を配することで、垣の直線と植物の曲線が絶えず交差する変化に富んだ構成を作り上げています。太い垣は切羽台と耳を確実に結び、細く伸びる枝は透かしの空間へ軽やかな動きを与えるため、大きな開口を備えながら画面には安定した骨格と心地よいリズムが保たれています。
梅花は丸みある肉彫で一輪ずつ表情を変え、細長い蕾と節のある枝を組み合わせながら、花心や蕾の先へ金色を点じて黒褐色の地鉄へ春の光を添えています。裏面では表と異なる位置から垣と梅枝が重なって見え、花の向きや枝の流れも変化するため、鐔を返すたび一つの庭を垣の表裏から眺めるような奥行きが生まれます。
厚みある鉄地と丸耳が全体を力強く引き締め、肉彫の梅と透かした垣を一体化する装飾性、金色を要所へ配する華やぎから制作年代は江戸後期と鑑せられます。明るい背景では格子と梅枝が端正な影絵となり、暗い背景では古鉄の量感と花の金色が際立つため、展示にも拵にも映え、早春の吉祥意匠と大胆な地透の魅力を気負いなく楽しめる親しみ深い一枚です。