老梅図鐔 無銘(水戸) -Mumei (Mito)- 12-1782
通常価格:¥220,000
税込
老梅図鐔
無銘(水戸)
-Mumei (Mito)-
縦87.9ミリ 横81.3ミリ 切羽台厚3.6ミリ 重量139.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
水戸金工は徳川御三家の一つである水戸藩の文化を背景に発展し、江戸後期には藩工と町彫金工が互いに技を競いながら、鉄地や赤銅地へ人物、動植物、故事、風景を絵画のように描き出す華麗な作風を完成させました。深みある地色を生かした高彫、鋤出彫、毛彫に金銀や素銅の色絵を組み合わせ、量感のある主題と繊細な細部を一つの画面へまとめることに長け、水戸物は写実味と品格を兼ね備えた刀装具として今日も高く評価されています。
梅は厳寒の中で他の花に先駆けて咲くことから忍耐、高潔、再生を象徴し、とりわけ風雪を受けて複雑にうねる老幹へ清らかな花を添える老梅図は、長い歳月を生き抜く生命力と春の到来を一つに表す格調高い画題です。若木の端正さとは異なる老梅の節や瘤には悠久の時間が宿り、その枝先に開く花は静かな画面へ凛とした生命の輝きを与えます。
本品は大振りの竪丸形鉄地を広々と用い、表の右側から上方へ伸びる節くれだった老梅の幹を鋤出高彫で力強く起こし、樹皮の深い皺、枝の折れ曲がり、大小の瘤を変化に富む鏨で彫り分けながら、下方の細枝と上方へ連なる花を呼応させ、一本の古木が画面を巡る雄大な構成を作り上げています。左側へ豊かな余白を置くことで老梅の姿がいっそう際立ち、重厚な鉄地の中に春を待つ静かな空気が広がります。
枝先に咲く梅花と蕾には銀を主体とする色絵を施し、花心や細枝へ金色を添えることで、黒褐色の地鉄に清冽な白梅と柔らかな春光を浮かび上がらせています。裏面では表から続く枝を左側へ伸ばし、わずかな花を散らして余韻を残すため、鐔を返しながら一本の老梅の周囲を巡るように鑑賞でき、表の充実した彫りと裏の静けさが互いを引き立てます。
鎚目を生かした地肌、軽く打ち返した耳、肉厚に起こされた老幹、金銀色絵の澄んだ輝きには水戸金工らしい写実性と装飾感覚がよく表れ、遠目には大樹の堂々たる姿、手元では樹皮の一筋、花弁、蕾、細枝まで見どころが尽きず、古鉄の力強さと白梅の気品を一枚で堪能できる、水戸物を代表するにふさわしい風格豊かな作品です。