許由巣父図透鐔 無銘(正阿弥) -Mumei (Shoami)- 12-1779
通常価格:¥198,000
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許由巣父図透鐔
無銘(正阿弥)
-Mumei (Shoami)-
縦81.6ミリ 横81.4ミリ 切羽台厚5.2ミリ 重量136.0グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
正阿弥は室町時代から江戸時代にかけて京都を起点に各地へ広がり、鉄地の鍛えと透かしを基礎に、土地ごとの好みや技法を取り入れながら多彩な作品を生み出した鐔工の大きな系統です。本作のように太い鉄骨を耳、切羽台、人物、樹木へ巧みに連結し、物語性のある画題を肉彫地透で立体的に表す作品には、武具としての堅牢さと鑑賞性を両立させた正阿弥の特色がよく表れています。
許由巣父図は、中国古代の伝説的な隠士である許由と巣父の故事に基づく画題で、帝尭から天下を譲ると聞かされた許由が、その話で耳が汚れたとして潁水で耳を洗い、牛を連れてきた巣父が事情を知ると、そのような水を牛に飲ませることはできないとして上流へ立ち去った場面を表します。世俗の権勢や名利に心を動かされない両者の姿は、清廉、高潔、無欲の象徴として尊ばれ、武家の教養と精神性を映す故事人物図として刀装具にも好まれました。
本作は大振りの丸形鉄地へ老樹、許由、牛、水辺を肉彫地透で連続させ、上方に枝を大きく張る老樹、下方の左右に人物と牛を配することで、限られた円内へ故事の舞台を明快に組み立てています。表では左下の人物に銀色を添え、右下には金色の象嵌を残す牛を置き、裏へ返すと人物と牛が左右を入れ替えながら同じ場面の背面が現れるため、透かし彫りの構造そのものが立体的な物語表現として働いています。
肉厚な切羽台と丸耳を、幹、枝、岩、人物、牛からなる太細ある鉄骨で確実に結び、広く開いた透かしの軽快さを保ちながら、手取りには中期正阿弥らしい確かな量感を備えています。黒褐色に落ち着いた地鉄、歳月によって穏やかに馴染んだ象嵌色絵、人物の表情や牛の量感を伝える彫りには古拙で親しみ深い趣があり、明るい背景では許由と巣父の故事が力強い影となって浮かび上がるため、正阿弥の構成力、古鉄の味わい、由緒ある画題を一枚で堪能できる格調高い作品です。