桐鳳凰図鐔 旭光斎東雲(花押) -Kyokkosai Tōun (kao)- 12-1777
通常価格:¥236,500
税込
桐鳳凰図鐔
旭光斎東雲(花押)
-Kyokkosai Tōun (kao)-
縦90.0ミリ 横83.3ミリ 切羽台厚4.7ミリ 重量184.0グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
旭光斎東雲は奈良派の流れをくむ江戸後期の金工で、詳しい伝歴には未詳の点を残すものの、一資料には天明6年(1786年)生まれと記されています。奈良派は絵画的な画題を巧みな鏨使いで地金へ写し取り、鉄、赤銅、四分一などの素材に肉彫や色金を取り合わせて、人物、動植物、故事などを格調高く表した一派であり、本作にも力強い鉄地と華麗な金工装飾を調和させる東雲の確かな力量が表れています。
鳳凰は優れた君主が治める平和な世に現れると伝えられる瑞鳥で、桐はその鳳凰が宿る瑞木とされ、両者を取り合わせた桐鳳凰図は太平、繁栄、家運隆盛を寿ぐ格調高い吉祥画題として、宮廷の装飾から武家の調度、刀装具に至るまで広く尊ばれてきました。
本作は大振りの撫角形鉄地に深く変化に富んだ槌目を施し、表の上方には大きく翼を広げる鳳凰、下方には葉と花を伴う桐を配しており、鳳凰の鋭い眼差しや冠羽、幾重にも重なる翼、左右へ長く翻る尾羽を鋤出彫と細密な彫線で描き分け、要所へ施した金布目象嵌によって瑞鳥の威容を鮮やかに引き立てています。
裏面には鳳凰を描かず、枝葉を伸ばす桐と三つの花房を画面いっぱいに巡らせ、表の躍動的な構図に対して植物文様の穏やかな広がりを見せており、二つの小透を巧みに取り込んだ左右非対称の配置と、切羽台を囲む余白が濃密な彫刻へ心地よい間を生み出しています。表裏を返すことで、鳳凰が桐へ舞い降りる華麗な場面と、瑞木のみが静かに繁る余韻ある景色を続けて鑑賞できる構成です。
黒褐色に育った地鉄と古金色の対照は華やかでありながら落ち着きがあり、尾羽や桐の茎、花、葉脈に残る金布目象嵌が光の方向に応じて細やかに浮かび上がり、耳に巡らされた金色の縁取りが重厚な画面全体を端正に引き締めています。大振りで量感豊かな鉄地、旭光斎東雲の在銘・花押、奈良派らしい絵画性と技巧を凝らした吉祥意匠が揃い、正面では堂々たる存在感、手元では槌目や鏨、布目象嵌の細部を味わえる、展示の中心を担うにふさわしい格調高い作品です。